「フリーライター」は稼げるのか?ライター指南本著者に聞いてみた

最初からフリーライター1本に賭けることはオススメできない

――未経験からライターになり、収入を得るために必要な要素は何でしょう。 肥沼:2つあります。1つ目は“好きなことや得意分野を持っている”。2つ目は“情報感度が高く、企画力がある”です。まず1つ目に関して、筆頭はさかなクンです。編集者の立場になって考えてみてください。もしあなたが、魚に関する記事執筆を誰かに頼むことになったら、真っ先にさかなクンが思い浮かびませんか?あんなに魚に精通しているのですから、本業がライターであるかどうかは気にならないはずです。  もちろん、さかなクンほどの専門性を持ち合わせた人は多くありません。それでも、何かしらの得意分野、強み、好きなことがあれば、それは文章力やライターの実績より重宝されるでしょう。世の中にはメジャーなものからマイナーなものまで、あらゆる分野のメディアがあります。その人にしかない経験を活かして、活躍できるチャンスや場所は必ずあるはずです ――2つ目の「情報感度が高く、企画力がある」についても教えてください。 肥沼:得意分野が無くても、企画力や独自の視点があれば、同等の武器になります。私も実はこのタイプです。といっても、難しいことではありません。例えば私はデスマッチという過激なプロレスが好きなのですが、普通に紹介記事を書いてもファン以外には読まれない。そこで経営視点からデスマッチを捉え、どのように団体を運営しているのか、収益を出しているか、選手をマネジメントしているのかなどを取材し、ビジネス系メディアで記事にしました。おかげ様で好評でした。  世の中に求められているものは何か把握し、どのような企画であればそれを実現できるのか、考える力があれば、ライターとしての強みになるでしょう。 ――インターネットの普及でネットメディアが乱立し、原稿料が低下している現状があります。そんな中でも、しっかり稼ぐことはできるのでしょうか。 肥沼:確かにクラウドソーシングと呼ばれる業務委託サービスを見ると、一記事100円などの低額で、当たり前のようにライターを募集しています。未経験者でもライターデビューしやすくはなっていますが、この原稿料ではお小遣いにもなりませんよね。好きなことを中心に書き、十分な収入を得るのは簡単ではありません。  だから、私はフリーライターとして独立することを決して推奨しません。まずは副業で始めてみるのがいいでしょう。本業で収入を担保していれば、副業では好きなことや得意なことを中心にできるので、能力を発揮しやすいですし、ストレスも少ない。チャレンジしてみて、ライター業が自分に合うようであれば、本業に転向するのがいいでしょう。  ちなみにクラウドソーシングも、私は経験としてアリだと思っています。そこでのライター経験が、次のワンランク上のステージで売り込みをする際の実績になりますし、何ならその経験もネタにしてしまえばいいのです。例えば「クラウドソーシングで100円ライターをしてみた」という企画で、1日8時間働いて、ひと月で幾ら稼げるかを記事にしてみたら面白いかもしれません。

原稿料が安くても「複数媒体書き分け」で乗り切れる

――原稿料100円は極端だとしても、有名なネットメディアでも、一記事数千円しかもらえないことは珍しくありません。しっかり稼ぐのは難しい気が…… 肥沼:実績が少ないうちは、なかなか仕事を選べません。原稿料の高い仕事をしたくても、任されるとは限りませんから。ただ、できるだけ効率的に稼ぐ方法はあります。例えば、「アトピーに特化したSNSを立ち上げた女性」に取材をしたとします。その内容を、「ビジネス系メディア」だけでなく、「女性のキャリア系メディア」でも書き分けるのです。ほかにも「医療系」「ITビジネス系」「ライフハック系」などの媒体でも書き分けられるでしょう。一度の取材で複数の記事をかけるのですから、効率的ですよね。いろいろな分野の媒体と繋がりを持っておけば、こういったことも実現可能です。  また拙著の中で、ライターの北尾トロさんや勝谷誠彦さんなど、有名ライターの方たちが、いかにしてライター業を成立させているかも紹介しています。有名な大先輩ライターの実例ですから、きっと役に立ちますし、成功するための方法は一つだけでないことも分かると思いますよ。  本書ではほかにも、編集者とのコネクションの作り方や売り込みの方法、企画の立て方、文章力の磨き方など、ライターにとって必要となる内容が盛り込まれている。すべてのビジネスパーソンにとって、これからの働き方を見直す時代に差し掛かっている今。複職や副業について考えたとき、本書を手に取って、ライターを一つの選択として考えてみるのもいいかもしれない。 ※「AIの衝撃 人工知能は人類の敵か(講談社現代新書)小林雅一」より <取材・文/HBO編集部> 【肥沼和之】 1980年東京生まれ。ジャーナリスト、ライター。小説家を目指し、会社勤めをしながら執筆・投稿を続ける。27歳で小説家を断念するも、文章を書く仕事に就きたいという思いから、求人系広告代理店に転職し、転職サイトの求人原稿制作に従事する。2009年、フリーランスに転向。ビジネス系、人材・求人系の記事を執筆するほか、ノンフィクション分野も手掛ける。コエヌマカズユキ名義でも活動中。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。
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