死と直面しながら報道に務めるメキシコのジャーナリストたち

命をかけて真実を伝えるジャーナリスト

 そして3月下旬に殺害されたミロスラバ・ブリーチとリカルド・モンルイも紛争のある地方でジャーナリズムの仕事をしていた。ブリーチはチウアウア州で麻薬組織と州の国境警察の癒着を暴く報道活動をしていた。また、麻薬組織が山間の土着民族をそこから追い出して麻薬用のケシの栽培をしてアヘンを収穫していることを報じたりしていた。昨年8月6日にはチウアウア州の麻薬組織が数百の家族をそこから追い出して彼らの土地を没収した調査報告を紙面に公開したのであった。勿論、その目的はケシの栽培であった。  リカルド・モンルイは麻薬組織が一番勢力を張っているベラクルス州でエル・ポリティコ紙のディレクターを務め、他にも数紙に寄稿していた人物であった。彼は犯罪組織の非道を調査して、それを報道していた。ベラクルス州のハビエル・ドゥアルテ州知事は今も逃亡していることからも分かるように同州の麻薬組織と政治家との癒着は根が深く、それを調査し、紙面で伝えていた。3月20日に家族とレストランから出たところを近づいて来たオートバイに乗っていた数人から受けた銃弾に倒れ死亡した。(参照:「Committee to Protect Journalists」)  メキシコでジャーナリストの中でも犯罪に関係した分野を担当することは自らの死と直面しながら報道活動を続けねならないのである。3月に亡くなった3人のジャーナリストも危険を承知でジャーナリストとしての義務である真実を伝えるという仕事に使命を感じていたと彼らの仕事仲間が語っているという。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会