パチンコ業界は、公営ギャンブルに比べ、依存問題について一定の取り組みは行っていた。
リカバリーサポート・ネットワークとういう民間の電話相談窓口の支援や連携をはじめ、テレビCMの自粛やチラシ広告における注意喚起、機能的には不十分ではあるが、自己申告プログラムも導入済みだ。
しかし日本全国に1万店もの巨大な店舗群を抱える業界であり、売上も他の公営ギャンブルとは比にならない。「ギャンブル依存症問題=パチンコの問題」と国会で問題視されるほどである。だからこそ、今回のギャンブル等依存症対策の課題においても具体的な対策が挙げられている。
その中でも特に注目されるのは、遊技機の出玉規制の基準等の見直しである。
昨年の、パチンコ釘の問題による、いわゆるMAX機全撤去は記憶に新しいところではあるが、撤去された機械に関わらず、パチンコ、スロット共に、昨年の1年間、その仕様は低射幸性の遊技機へと大きく様変わりしている。スロットユーザーであれば、新基準機の出玉の鈍さは既に体験しているはず。これはあくまで業界側の自主規制という体裁ではあるが、警察庁の指導があってのこと。
そして今回の対策では、業界の自主規制の範囲ではなく、警察庁による遊技機の規則改正という形で、遊技機の出玉性能がより制限される。
某ビジネス紙によれば、規則改正により、全国の遊技機が一斉に撤去されるという報道もあるほどだ。(仮にそうなったとしても、全撤去までにはかなりの経過措置期間が設けられる見込み)
遊技機の射幸性がより低くなれば、今のように「等価交換営業」もしくは「等価交換に近い営業」自体が難しくなる可能性が高い。またコアユーザーのパチンコ離れも懸念され、営業面における打撃は想定外に大きいかも知れない。
今回の会議で注目されたのは他に、公営ギャンブル場における銀行ATMのキャッシング機能の廃止である。
ギャンブルに負け熱くなってしまった客が、ATMのキャッシング機能を利用し、銀行の個人向け融資や消費者金融から借金をする。これこそが、ギャンブル依存の非常に危険な「症状」である。
会議で金融庁は、「現状では、銀行の個人向け融資を通じ、ギャンブル等依存症患者がギャンブル等の資金を借り入れる可能性がある。銀行の個人向けカードローンについて、現状では、ギャンブル等依存症対策としての取組は存在していないため、日本貸金業協会による貸付自粛に係る取組等も参考にしつつ、ギャンブル等依存症患者に対する貸付けの在り方を検討する」とした。
銀行ATMは、公営ギャンブル場だけではなく、一部のパチンコ店の店内にも設置されている。
私事で恐縮ではあるが、パチンコをしていた学生時代、負けるとそれを取り戻そうと熱くなる自分の性分を知ったうえで、パチンコ店に行くときは、銀行のカードや財布は家に置き、その日決めた「軍資金」だけをポケットに入れていったものだ。
近隣のコンビニに行けば、同様のATMが設置されていることは重々承知の上で、それでもギャンブル場やパチンコ店からは、銀行ATMはすべて撤去すべきである。
5月には「ギャンブル等依存症対策法案」が議員立法で成立する可能性があるとも言われている。政府には「カジノ在りき」の、急場凌ぎの対策ではない、実効性のある対策をしっかりと講じてほしい。
<文・安達 夕>