元女性トラック運転手の回想。ひどい扱いを受けても、相談先がなくうなだれていた毎日

父親に付いて、物流の現実を目の当たりにした筆者。そこで感じ得たものとは

 前回は、筆者が長距離トラック運転手として家業を手伝っていた頃に抱いた問題意識を綴った。今回も引き続き、回想していきたい。

 今から20数年前、父の経営する工場近くの小学校に通っていた筆者は、放課後のピアノのレッスンがおっくうで、よく工場に逃げては夕方から近くの得意先に納品へ向かう父のトラックに揺られながら、カセットから流れる鳥羽一郎の「兄弟船」に月謝代を垂れ流していた。

 当時は携帯電話など普及しておらず、一度「出港」してしまえばこっちのモン。が、「帰港」すれば、待っているのは経理として同じ工場の事務室で働く母だ。「たったひとりのおふくろさんに、楽な暮らしをさせたくて」と言い訳しても、結局彼女の怒りは毎度「大しけ」だった。

納品先手前に立ちはだかるストッパー「守衛」

 比較的規模の大きい元請け先や配送先に行くと、会社の出入り口に守衛がいることが多い。多くのドライバーは、そこでトラックを降り、窓口で会社名や氏名、ナンバープレートの番号と構内の行き先などを書かなくてはならない。

 大人になった筆者がドライバーとして取引先に赴いた際、守衛室では女性という立場が不本意ながらプラスに働いたのだろう。たいていの守衛が笑顔で対応してくれた。

 当時の彼らは、やはり50代以上のおっちゃんがほとんど。トラックのおっちゃん同様、彼らからも、ちやほやされていたのだと思う。しかし、父の工場や取引先で知り合った50~60代の男性ドライバーらからは、理不尽な理由で守衛に構内への入場を止められたことが何度もあるとよく聞いていた。

 会社で作業していたある日、得意先から「30分以上待っているのに、まだ金型が届かない」というクレームの電話を受けた。すぐさまドライバーに連絡をすると、守衛が「担当者に確認してくるから待っていろ」と言ったきり帰って来ないという。その旨を得意先に折り返し連絡して伝えると、守衛は彼の元には来ていないとのこと。後で分かったことだが、その守衛はそのままタバコ休憩に入っていた。

 いつも笑顔でハキハキと挨拶してくれる守衛も大勢いる。が、あいさつがない、字が汚い、態度が気に入らないなどという一方的な理由で、日本の物流を止めている守衛がいるのも事実。長距離を走り、時間ギリギリで到着した矢先にいるのが「ゴールキーパー」では、ドライバーの精神力は、体力以上に消耗される。

「運転手さん」ではなく、名前で呼ばれた喜び

 そんな入り口をようやく通過し、荷物の引取り・納品先に向かうと、次に待ち構えるのは現場の作業員である。

 彼らもほぼ全員が男性で、女性には優しいのかと思いきや、当時、筆者の現場での業務は、トラックで納品引取りをする金型の技術営業だったため、「工場マン」としてのプライドが高い元請けの担当者とのやり取りは、運送業のトラックドライバー同様、我慢の連続だった。

 笑わない相手の表情と反比例するかのように限界まで自分の口角をあげ、普段より半オクターブ高い声で挨拶するも、こちらの顔すら見ない。

 昼休み中の構内走行禁止の工場では、午前中には荷物を降ろし、構内から出ていきたいところだが、作業員は急いではくれない。荷下ろしは終わっていても作業員からの検品を待っている際に昼休みに入ってしまえば、「運転手さんも休んでて」と工場の奥へと消えてしまう。

 さらには、手で運べるような荷物数個だけの搬入でも、「前のトラックが出るまで待っててよ」と戻され、納品時間に間に合わせてきても、結局構内で1時間以上待たされることもある。

 中でも筆者が一番違和感を抱いたのは、いつも「運転手さん」と呼ばれることだった。

 職種で人を呼ぶのは日本の文化ではあるのは重々承知しているのだが、毎日のように顔を合わせる担当者からも「運転手さん」と呼ばれると、若干気持ちは沈む。そんな中、過去に2人だけ、筆者を名前で呼んでくれた取引先の担当者がいた。彼らのことは、トラックを降りた今でも忘れられない。

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