各地の大型施設が「耐震化」でピンチに……身売りするリゾートホテル、閉店する百貨店も
また、たとえ金銭的にある程度の余裕がある企業の店舗であっても、大手チェーン店でもない限り、店舗の大部分を営業しながら耐震工事をおこなわなければ経営に甚大な影響が出ることは必至だ。
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【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」
※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中
・イーアス高尾、6月22日開業-八王子最大級のショッピングセンターに
・ニトリ渋谷店、2017年6月ごろ開店-丸井・シダックス跡に「都心初」単独旗艦店
・ライザップ、ジーンズメイトを子会社化
耐震改修では建物を支える下層階ほど大規模な工事がおこなわれることが多いが、とくに百貨店ではこうした下層部分でブランド品、宝飾品、化粧品、婦人服などといった「高額商品」「売れすじ商品」が販売されており、店舗の顔である下層階の営業を休止すれば経営に大きな影響が出てしまう。そのため、少しずつ耐震改修をおこなうことを余儀なくされる店舗が多いが、そのぶん工期は非常に長期化してしまい、また、工事を複数回に分けて行うとなれば補助金の申請も難しいものとなる。
すでに自治体により耐震診断結果が公表された大型店や大型ホテルのなかには、その都市で唯一の百貨店やシティホテルでありながら、「耐震性が非常に低い」と診断されたにも関わらず「今後の耐震計画は未定」と発表されているものも少なくない。
長年に亘って「街の顔」として、人生の節目や日々のくらしを彩ってきた大型ホテルや大型店。経営者側も「安心・安全な建物で営業を続けたい」という思いは大きいであろうが、各地の災害復興需要に加え、耐震診断結果の公表義務化による「耐震化工事の駆け込み需要」もあって工事費はさらに高騰しつつあるといい、今後数年間で全国各地の「街の顔」が次々と姿を消していく可能性も高い。
<取材・文・撮影/
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」
この連載の前回記事
2017.04.05
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