熊本地震でも大型店への被害が相次いだ。 震度6強の揺れに襲われた熊本市の「鶴屋百貨店」は、本館の一部が築64年と築年数が非常に高く、耐震補強済みであったものの被害を受けたため全館再開は6月までずれ込んだ
ホテルよりも深刻な大型店の耐震改修――「黒字なのに閉店」も
もちろん、こうした耐震化問題を抱えているのはホテルだけではない。
これまで挙げたように、大型リゾートホテルでは大手企業からの「救いの手」が差し伸べられる例も多い一方で、より深刻な問題となっているのが、大型店の耐震化だ。
百貨店や総合スーパーの閉店が続く昨今であるが、近年の閉店事例では「建物の老朽化」「耐震性の低さ」を閉店理由の1つに挙げている店舗も少なくない。とくに、都市中心部の大型店は高度成長期に建設されたものが非常に多く、たとえ現在は黒字を計上している店舗だとしても「今後の耐震改修費用と照らし合わせると閉店するしかない」という例も多いのだ。
一方、震度6弱の揺れに襲われた別府市の百貨店「トキハ別府店」は新耐震基準適合物件。 被災当日から通常営業をおこなうことができたため、地震直後の市民生活を支えた
例えば「耐震性の低さ」を閉店理由の1つとして挙げた百貨店「伊万里玉屋」(佐賀県伊万里市、2016年1月閉店)の場合、築50年の店舗(5階建て、売場面積8,312㎡)を耐震化するためにかかる費用は3億円以上と見積もられた。一方で伊万里玉屋の年商は約8億円。到底、耐震化費用を捻出することはできず、閉店するに至ったという。
閉店理由の1つとして「耐震化問題」を挙げた伊万里玉屋
国は改正耐震改修促進法の施行とともに、民間の建物に対しても耐震改修費用の11.5%を補助する制度を作ったが、僅か1割程度の補助では「資金の足しにもならない」と感じる企業も多い。また、地方自治体でも独自にこうした補助制度を設けているところがあるものの、民間の建物への「税金投入」には慎重な自治体も多く、制度が上手く活用できていない例もあるという。