ジャイアンツ・高木京介の復帰がギャンブル依存症脱却のモデルケースになりうる可能性

3月28日育成選手背番号「028」での練習合流から

 注目したもう一つのニュースは、3月28日午後から巨人軍の3軍の練習に合流した時の発言と容姿からである。 「ずっと個人で(練習を)やってきて、今日、久しぶりに全体でやって、正直疲れました。先のプランより、また野球ができるありがたみ、喜びをいっぱい真摯に、ひたむきに努力していくだけです」などと話しながら、体重が10キロ減ったため、まずは体力強化を主眼に練習に取り組む、と言う。  復帰したばかりの野球に関してポジティヴではなくネガティヴな感想を述べていることもかえって信用性がある。なぜなら根拠なく明るい未来像だけを述べることは虚言だからである。依存症者はこの虚言や根拠のない思い込みを述べることが多い。しかし高木投手はそういった発言もなく記者相手にリップサービスすることもなかったようだ。また体重が10キロ太ったのではなく減って戻って来たことから、1年間規範ある生活習慣の中で今後のキャリアを見据えて体作りをしてきた事実がそこにはあると思える。耳当たりの良い発言ではなく、出来上がった体と行動が本心を語っているのではないか。

ギャンブルへの嫌悪感を体感したことは、脱却への大きな一歩

 もちろん、記者会見の一問一答からは、またぶり返すのではという不安を感じられる発言もあった。思い起こせば1年前、他の3選手の発覚時には名乗り出ずに不誠実とみられる点があったのも事実だ。  しかし1年間の罰を受けて、自分の弱さを自覚し、ギャンブルへの嫌悪感を体で覚えたことはギャンブルから離れるのを可能にする大きな要素である。  今後は、将来への甘い見通しではなく、今日1日を何とかクリアすることで達成感を得たり、仕事と趣味と家族等から得る喜び、モチベーションを肌で感じたりしながら生活できるのかが判断の基準となろう。  筆者としては、今般の報道を見る限り、彼の野球人生で積み上げてきた実績に加え、家庭人や市民としての価値観や生活習慣が改まったことで復帰の成功例となりえるチャンスは広がったと見える。年齢的にも弱冠27歳。将来ある若者の失敗からの反転成功に向けてエールを送りたい。苦悩しながらも乗り越えていくその姿が、ギャンブルをやめたがっている多くの者に希望を与える姿であってほしい。 <文・安達 夕>
Twitter:@yuu_adachi
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