無修正動画サイト「カリビアンコム」関係者が逮捕。海外運営なのになぜ摘発できたのか?
逮捕した。
逮捕地は沖縄県内であるようだが、「カリビアンコム」は、米国カリフォルニア州で運営されている。このようなサイトになぜ日本の法律が適用できるのか。そして、日本で逮捕できるのか。今回は、この点を掘り下げてみたい。
カリビアンコムのサイトでは、こんな一文を掲げ、無修正動画の配信は合法であると主張している。
<当サイトはアメリカ西海岸でサイト管理、運営の全てを行なっており、海外にサーバーを設置することにより、サーバーが設置されている国・地域の法律が適用され、合法的に無修正の動画・画像の配信を行なっています。>
たしかに、カリビアンコムは、カリフォルニア州の企業がつくる「DTIグループ」が運営し、動画のアップロード等もカリフォルニア州で行われているようだ。米国においては、無修正動画は合法とされており、一見、カリビアンコムの言い分も正しいようにも思える。
ではなぜ、今回、警視庁は逮捕に踏み切ったのか。
今回、被疑事実となっている「わいせつ電磁的記録送信頒布罪」(刑法175条)は、簡単に言うと、「わいせつな内容のデータを送信して渡す」罪だ。この罪が成立するためには「犯罪行為の少なくとも一部」が日本国内で行われている必要がある。
今回はカリビアンコムが主張するように「動画のアップロードが全てカリフォルニア州で行われている」とすると、全ての犯罪行為は日本国外で終了しているのではないかという疑問も生じる。「動画をサーバーからダウンロード」する行為は顧客側の動作に過ぎず、「頒布という犯罪行為」は国外で完結しているのではないか。そんな解釈も成り立ちそうに見える以上、本件では「無修正動画の『頒布』行為とはなにを意味するのか」を考えざるを得なくなってしまう。
実は裁判実務上は、この「頒布」問題について決着がついている。2014年に最高裁判所が判断を下しているのだ(最決平成26年11月25日)。
こちらの事案も、やはり米国内において、被告人が日本語表記を含むウェブサイトを運営。米国在住の知人を介し、無修正動画をサーバーにアップロードした上で、顧客に有料でダウンロードさせていたというものである。
弁護側は「被告人が行った行為は無修正動画を海外サーバーにアップロードしただけであり、動画をダウンロードするかどうかは顧客の意思に委ねられているから、被告人が『送信して頒布』したとはいえない」と主張した。
これに対して最高裁判所は弁護側の主張を斥けている。その理屈はこうだ。
まず、「頒布」とは、「不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめること」であると定義されている。
被告人が構築したシステムは、顧客がダウンロードボタン等をクリックすれば自動的に顧客のコンピュータに無修正動画が送信されるようになっていた。この場合、無修正動画の配信目当ての顧客がアクセスする以上、「クリック」という行為は、無修正動画が自動送信されるキッカケに過ぎない。つまり、被告人が、顧客の求めに応じて、「顧客のコンピュータに動画を送信した」と評価できる、という理屈だ。
なんだかわかりづらい理屈にも思えるが、まず大前提として「顧客の注文に対して手動で無修正動画を送信」するのは「頒布」行為に該当する。では、顧客がクリックすると「自動で無修正動画が送信される」システムが構築されている場合はどうか? これは「(顧客の注文に対する)送信作業を自動化した」に過ぎず、前述の手動送信と本質的には変わらないという判断である。
かくして判例上、「顧客のクリック操作によりダウンロードが自動的に開始されるシステム」は刑法175条にいう「頒布」にあたるとされるようになった。
警視庁は、無修正アダルトサイト「カリビアンコム」の運営に関与したとして、米国籍の男性を、「わいせつ電磁的記録送信頒布」罪(刑法175条)の被疑事実で無修正動画の配信は「合法」か?
本件は日本国内で行われた犯罪行為なのか?
わいせつ電磁的記録送信頒布罪の「頒布」ってなに?
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