二つ目は、組織に属さずに生きる道。
サラリーマン時代に悔しい思いをした私は、いまは週4日だけBarを営んでいる。上司から責任を押しつけられることもなく、部下に責任を押しつけることもない。仕事をするよう命令されることもない。一人で営んでいるからだ。すべての業務を一人で行い、すべての責任は私だけにある。何と清々しいことか。
週3日の休みは、お米や大豆を自給して、味噌や醤油などを作っている。移住希望者に空き家を紹介する活動などもしている。
つい最近、都心から移住してきたファミリーは、ご夫婦と二人のお子さんの4人家族。空き家は二棟あって庭は広くて井戸水が湧き、1000㎡の畑とトラクターなど農機具も自由に使える。これでたった2万円程度。
ささやかな移住カウンセリングのナリワイを始めて、生活費が不足する分は夫婦で介護の仕事をして賄う。お互いに必要以上は働かない。半自給暮らしをすると、お金はそんなにかからなくなる。ゆえにガッツリ働かなくてもいい。責任を負える範囲で仕事をすればいいのだ。
冒頭に述べた、金銭トラブルの責任を負わされた青年はいま、ご夫婦で地方に移住してお米や野菜を自給する暮らしを目指し、NPO設立に動き出そうとしている。
一つの組織に従属して働くということは、給料と雇用を人質に取られているも同然だ。理不尽なことがあったり、納得いかないことがあったり、責任を押しつけられたりしても、我慢して受け入れねばならない。そういう働き方はすでにシステムとして疲弊し、徐々に衰退していく。
どこでどう、どれくらいの時間で働くか。自らの意思で選び取る時代に向かいつつある。今の場所に満足していないなら、あと何年働かせ続けられるのかを考慮して、違う道を考え始めるべきだろう。
<文/髙坂勝>
1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを12年前に開店。『
次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)を10月26日に上梓。
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar
「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO
「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に
『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。