この寺院では麻薬患者だけでなく、アルコール依存症やタバコ依存症患者も受け入れている。しかし、麻薬患者はその常習性の強さから隔離された宿舎で過ごし、自由に敷地から出ることも許されない。
また、僧侶はなにもいらないと言ったが、実際には食費として1日200バーツを目安に滞在日数分持参し、最初に事務所に預ける。それ以外は費用は一切かからない。国籍も地位も名誉も関係ない。やめたいという自発的な意志があれば受け入れてもらえる。
ここでの生活は最低15日間になる。最初の5日間と最後の日は午前と午後に薬草を煮詰めた汁を飲まされ、体に残る毒を吐き出させる。薬草は数十種類にもおよび、飲むと胃の中がぐるぐるとしてすべて吐き出さないと頭がくらくらして数時間は寝込む羽目になる。
寺院の庭や、近くにある独自運営の田畑で取れた薬草をここで茹で、その汁を飲むことで強い吐き気を誘い、身体の毒物を抜く
「最初はうまく吐き出せないのですが、慣れれば毒が吐き出されて体が浄化していくような気持ちです」と、滞在10日目の中毒患者が言った。ただ、飲めと言われるともう嫌なのだとも苦笑い。取材した日、ちょうどその薬を飲用するのが最後の日だというアメリカ人男性は「もうやらなくていいのが最高に嬉しい」と喜んでいた。