――「ワセダクロニクル」の運営は早稲田大学ジャーナリズム研究所となっていますが、立ち上げの経緯を教えてください。
「ワセダクロニクル」編集長の渡辺周氏
渡辺:僕は昨年3月まで朝日新聞の記者だったのですが、以前から何人かの有志を集めて、調査報道に特化したメディアをやりたいと思っていました。ここ(早稲田大学ジャーナリズム研究所)にも招聘研究員として以前から出入りしていて、花田(達朗)先生のもと梁山泊的にいろんなメディアの人が集まっていたんです。
ただ、記者仲間や知り合いを含め、昨今のメディア状況下で、みなさん会社や組織の枠に閉じこもって、なかなか思うように活動できていなかった。そんな折、この話題を彼らにしたところ、幸いにも花田先生はじめ賛同していただき、立ち上げが決まりました。
―――サイトオープンまでの具体的な動きを教えてください。
渡辺:メンバーは知り合いの記者や研究所の方々を中心に2年くらい前から募っていました。記者時代にも夏休みを使って韓国の「ニュース打破(タパ)」といった海外の調査報道メディアの見学も行いました。立ち上げ以前の活動については、招聘研究員から参加費ということで多少のカンパがあったり、知り合いの記者から寄付もいただきましたが、基本はメンバーの自費でまかなっています。
――クラウドファンディングではすでに400万円超の寄付が集まっています。
渡辺:設立前は、寄付文化がない日本でうまくいくわけがないと、何人にも言われました。しかし、かなり早い段階で目標金額を達成することができ、本当にありがたいと思っています。もちろん、国ごとに寄付文化は異なるのでしょうが、人間の本質は変わらない。良いものを生み出すことができれば、相手の心に刺さるのだとわかりました。
――確かに、ツイッターなどでも好意的なメッセージを多く目にします。
渡辺:そもそも調査報道自体、手間やお金もかかるし、リスクも多々ある。しかも部数や視聴率には直接的に結びつかないので、どのメディアも手を引いているのが現状です。メディアが権力を監視し、強い者に対して戦うという本来の役割を果たさなくなっている。そんななかでも、リスクも引き受け、愚直に調査報道をやるという方針を支持してもらっていると思います。
――取材記者以外に、チームにはどのような人材がいるのでしょうか?
渡辺:まぁ、チームというほど大袈裟なものではないですが。データエンジニアの方とか、元メディア業界の営業経験者もいます。僕の場合、極端にITと営業に弱いので、そこはよく助けてもらっています(笑)。どうしたら読みやすいサイトになるかとか、スマホ仕様にどう対応するかとか。ロゴを含めシンプル&スタイリッシュなイメージで、うまく作ってもらえました。