宇宙から地表を監視する「情報収集衛星」の打ち上げ成功――その意義と課題

細く見える光学衛星と、いつでも見えるレーダー衛星

 情報収集衛星には、大きく「光学衛星」と「レーダー衛星」の2種類がある。  光学衛星は、光学センサーという高性能なデジタルカメラのような装置で地表を撮影する衛星で、地上を数十cmという細かい分解能で見ることができる。  ちなみに、映画ではよく、車のナンバー・プレートや軍人の階級章などが読み取れるスパイ衛星が登場するが、実際にはカメラの性能や大気のゆらぎのせいで、米国の偵察衛星でも10cm前後が限界とされ、そこまで細かく見ることはできない。とくに情報収集衛星のような分解能数十cmでは、車の車種を見分けたり、人が何人いるかを数えたり(もちろんその人物の正体はわからない)といったことがわかる程度である。  また、撮影したい場所が夜だったり、あるいは上空に雲がかかっていたりすると撮影できないという欠点をもつ。  一方のレーダー衛星は、合成開口レーダーという、電波を使って画像が撮れる技術を使う衛星で、物体を細かく見る能力は光学衛星よりは劣るものの、電波を使って撮影するため、撮影したい場所が夜や天候が悪くても使うことができる。  現在、情報収集衛星は基本的に、この2種類の衛星をそれぞれ2機ずつ、合計4機打ち上げて運用することを基本方針としている。つまり光学衛星で細かい画像も撮れるし、もし見たい場所が夜や天気が悪い場合でも、レーダー衛星によって撮影が可能となる。また4機あるおかげで、基本的には毎日最低1回、地球上のあらゆる場所の撮影が可能となっている。

情報収集衛星の光学衛星とレーダー衛星の想像図 Image Credit: 内閣衛星情報センター

さらに強化される情報収集衛星

 情報収集衛星の打ち上げは2003年から始まり、打ち上げ失敗や故障などを経て、2013年にようやく4機体制が揃うことになった。またこの間、そして現在も技術開発が続いており、地表をより細かく見る能力や信頼性が向上している。  今回のレーダー5号機の打ち上げにより、現時点で情報収集衛星は、光学衛星が3機、レーダー衛星が4機の、計7機が運用されることになる。これは設計寿命を超えても動いている衛星があるためで、4機体制という基本は変わっていない。  ただ、前述のように4機体制では、毎日最低1回、任意の場所の上空を通過するだけであり、頻繁な監視はできない。1日あれば、隠していたミサイルを発射台に設置して発射することは可能であるし、1分1秒が勝負となる災害では言うまでもない。  そこで2015年に、内閣衛星情報センターは衛星数を2倍に増やし、計8機体制にすることを決定。さらに、この追加される4機は、これまでの4機が投入されてきた軌道から少しずらして、異なる時間に上空を通過する軌道に投入するという。これによって、より柔軟な運用が可能になることが期待される。  たとえば、これまでは情報収集衛星がミサイル発射などの怪しい動きを見つけても、次にその場所の上空を情報収集衛星が通過するのは約1日後だった。また災害が起きても、すぐにその地域の上空に衛星をもっていけるわけではないので、数時間から最大で1日のタイムロスが出てしまう。その間にミサイルが発射されたり、災害による被害がさらに進むかもしれない。しかし衛星数を増やせば、より高い頻度で情報を知ることができるようになる。  また、衛星が撮影したデータを送信する際、これまでは基本的に日本上空や、日本がもつ地上のアンテナがある場所の上空にさしかからないと送信できなかったが、新たにデータを中継する通信衛星を打ち上げることで、日本の上空を飛んでいないときでも、すぐさま日本へ向けて画像が送信できるようにするという。
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情報収集衛星の課題とは?
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