タイで人気上昇中の新興中級ホテル。日本人には既視感がある理由とは?

回転こそしないが、ラブホ的な利用で最も人気のスイートルーム。1泊2200バーツ(約7210円)。(THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN提供写真)

 下世話な話だが、タイの男女が肉体関係を持つとき、そもそもタイにはラブホテルというジャンルがなく、時間貸しをする小規模宿泊施設(以下便宜上ラブホテルとするが)のようなところに行く。こういったところは場末の小屋のようにひどい有様が多い。地方のラブホテルは1時間100バーツ前後(約330円)くらいからあり、基本的には街角に立つ売春婦とのちょんの間のような役割で、雰囲気もなにもない。  バンコクはさすがにもうちょっと洒落たところはあるが、日本の昭和時代かとも思えるような設備であり、人も何人か死んでいそうな怪しいところばかりだ。  そんな中、チャオプラヤ河に沿った古い区域に“おしゃれなラブホテルがある”という話を聞いて見に行ってみた。 「THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN」というホテルで、バンコクでは旧市街に当たる地域にあった。チャオプラヤ河も目の前のニューロード沿いで、バンコクで一番最初にできた欧州式の舗装道路だから“ニュー”と付くのに最も古い通りというおもしろいエピソードもある歴史的な場所にある。  まだ開業して2年ほどというこのホテルは外観はきれいで、そもそもラブホテルというのは大きな誤解だ。あくまでも新興の、外国人にも人気が出始めている中級ホテルであった。

バンコクで中級ホテルが増加中

THE HOUSE OF PHRAYA JASAENの外観。目の前は工業大学で、学生が試験前の詰め込み勉強のために泊まることもあるのだとか

 この2年3年でバンコクは中級ホテルの数が急激に増えた。かつては低予算でバンコク旅行をしようというと若者はカオサン通りを目指したものだ。レオナルド・ディカプリオ主演映画「ザ・ビーチ」(2000年)の冒頭でも登場した安宿街で、この年の前後は国籍別では日本人が最も多いというほど人気があった。しかし、現在は日本人旅行者がカオサンを訪れるのは宿泊ではなく、観光地としてやってくる人ばかりになってきている。  それは単純にはカオサンの機能にメリットがなくなったからだ。ネット検索が便利になり、バックパッカーたちの口コミ情報収集が不要になった。航空券も2000年以前はタイが最も航空券の安い国とも言われたが、今や格安航空会社も登場しているし、レガシーキャリアでさえネットで早い時期に買えば安い。  そして、なによりタイの物価が上がった。ジャンルによっては日本の方が安いものさえある。最近は日本人バックパッカーはタイに来ないでカンボジアのシアヌークビルやインドのプリーに流れるという話もある。カオサンも物価が上がり、しかもそこからバンコク市内観光のための往復を考えると、500~2000バーツ(約1650~6000円)の中級ホテルの方がコストパフォーマンス性に優れている。  こうして今、日本人だけでなく、世界中の低予算旅行者はバンコク中心の中級ホテルを求めている。「THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN」もその中のひとつになる。
次のページ
どことなくラブホ感漂う内装
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会