ベゾス氏率いるブルー・オリジンが開発中の「ニュー・グレン」ロケット Image Credit: Blue Origin
本サイトではたびたび、実業家イーロン・マスク氏率いる宇宙企業「スペースX」について取り上げ、ロケット打ち上げや火星移住計画など、その動向についてお伝えしてきたが、米国にはもうひとつ、ロケットや宇宙船の開発に挑む、スペースXにとってライバルのような宇宙企業がある。
ネット通販でおなじみAmazon.comの創業者で、ワシントン・ポスト紙のオーナーとしても知られる、ジェフ・ベゾス氏率いる「ブルー・オリジン」である。
ブルー・オリジンの設立は2000年。スペースXの設立は2002年なので、それよりも2年早い。このころは他にもさまざまな宇宙ベンチャーが立ち上がったが、スペースXら他の企業とは違い、ブルー・オリジンは長らく秘密主義を貫き、一体どんな活動をして、何を目指しているのかはほとんど知られていなかった。しかしここ数年は積極的に表舞台に立ち、宇宙への夢を喧伝している。
ベゾス氏はブルー・オリジンを立ち上げた目的を、「人類が宇宙に進出し、活動の場とするため」だと語る。そのためには、誰もが気軽に宇宙に行けるような、安価で安全なロケットが必要になる。そこで同社は、飛行機のように同じ機体を何度も使い回せる、再使用ロケットの開発に挑んだ。
ブルー・オリジンはここ最近まで秘密主義を貫き、たとえば新しいロケットを開発してもその詳細はしばらく明かさず、打ち上げのインターネット配信が行われるようになったのもここ最近からで、その実態は長らく不明だった。
しかし、同社のモットーである「Gradatim Ferociter」(ラテン語で「一歩一歩、獰猛に」)の言葉どおり、着実に開発を進めていった。
ブルー・オリジンはまず、ワシントン州に設計開発の拠点を、またテキサス州の西にあるベゾス氏所有の広大な牧場にエンジンやロケットの試験場を構え、ロケットの開発の飛行試験を繰り返した。開発資金も、最近でこそNASAや他の企業から提供を受けているが、設立当初から現在まで、大部分はベゾス氏が出資したという。
現在までに同社は、「ニュー・シェパード」と名付けられた小型のロケットを開発し、同じ機体を4回再使用し、合計5回飛行させることに成功している。ニュー・シェパードは人工衛星を打ち上げるだけの能力はもっていないが、高度100kmの、宇宙空間と呼ぶのに十分な高度にまで達する能力はあり、数年以内に人を乗せての宇宙観光や、無重力状態を利用した実験をビジネスとして展開したいとしている。
また並行して、より大型の、人工衛星を打ち上げられる新型ロケット「ニュー・グレン」と、そのための強力なロケット・エンジンの開発も行っている。