沖縄の米軍基地問題などを取材し続けているジャーナリストの竹中明洋氏が話す。
「投開票直前の1月18日に『沖縄タイムス』が、翁長氏の右腕である安慶田光男副知事(当時)の教員採用試験をめぐる口利き疑惑を報じた影響が大きかった。翁長氏は選挙後に、安慶田に関する報道の影響はないとフォローしていましたが、300票差という僅差だったことを考えれば、タイムスのスクープがなければ結果がひっくり返っていた可能性も十分。ただし、そのスクープ以上に県庁職員や自民党県連関係者までもが驚いていたのは、『タイムスが報じた』という事実でした。『琉球新報』と並んで、一貫して翁長氏を支えてきたメディアですから。沖縄タイムスの県政キャップは翁長氏が最も心を許す記者とも言われています。今、沖縄ではタイムスの“翁長離れ”が大きな注目を集めているのです」
安慶田氏はその報道からわずか5日後の1月23日に辞任を表明。当初は口利き疑惑を否定し、「(副知事を)辞めるつもりはない」と強気の姿勢を見せていたが、「前教育長だった諸見里明氏が実名で、県教委宛てに上申書を提出し、教員試験に関して安慶田氏から特定の人物の名前や受験番号を記したメモを渡されて圧力をかけられたと告発する動きが伝わり、あっさり辞任した」(竹中氏)という。
こうした風向きの変化は2月12日投開票の浦添市長選挙をも直撃した。那覇市にある米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市への移設の是非が争点となったこの選挙でも、安倍政権と翁長知事の代理対決の構図となったが、自公推薦の前職・松本哲治氏が、翁長知事が推す前市議・又吉健太郎氏に8690票もの差(有効投票数5万2776票)をつけて勝利したのだ。
「宮古島市長選で接戦を制したのが大きかった。宮古で敗れた影響で又吉陣営がお通夜のように沈んでいたのと対照的に、松本陣営は宮古で奥平氏を支援した関係者が大勢、浦添に乗り込んで盛り立てた。浦添市には宮古出身者が多いことも、有利に働きました」(自民党関係者)