ドン・キホーテが参入することで話題を集める”高速配達サービス”であるが、このようなサービスは他社でも拡大されつつある。以下の表に、おもな3社の高速配達サービス概要と、ネットスーパーの最大手であるイオンネットスーパーのサービス概要をまとめた。
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表:各社の「高速配達サービス」比較
ドン・キホーテの新サービス名「マジカ・プレミアム・ナウ」から一番に連想されるのが、ネット通販国内最大手のアマゾンジャパンが東京や大阪周辺の一部地域で行っている「アマゾン・プライム・ナウ」(Amazon Prime Now)だ。「マジカ・プレミアム・ナウ」は名称からして「アマゾン・プライム・ナウ」に類似しており、アマゾンよりも「少し安い」という価格設定も、同サービスを「一番のライバル」として意識したものであろう。
この「アマゾン・プライム・ナウ」は、アマゾンプライム会員向けのサービスで、利用条件は、商品を税込2500円以上購入し、指定地区へ配達する場合。配達料は1件につき税込890円となる。また、税込2500円以上購入の場合、2時間毎配達(指定した2時間内での配達)であれば、配達料は無料となる。注文にスマホの専用アプリを用いるところもドン・キホーテと同様だ。
この両者で最も大きく異なる点は、「アマゾン・プライム・ナウ」はアマゾンプライム会員専用のサービスだということだ。アマゾンプライム会員になるには年会費3,900円を払わなければならないのに対し、「マジカ・プレミアム・ナウ」はドン・キホーテ店頭で発行している電子マネー付ポイントカード「マジカ」(カード発行料100円)を持っていれば誰でも利用できる。
また、2017年2月現在「アマゾン・プライム・ナウ」の対象エリアは東京23区・川崎市・横浜市・大阪市とその周辺に限られている一方で、「マジカ・プレミアム・ナウ」の対象エリアは当初は大田区大森周辺のみとなるものの、全国45都道府県に出店するドン・キホーテの店舗網を活用すれば短期間のうちに広域的な配送網を構築することが容易であるため、「マジカ・プレミアム・ナウ」はアマゾンにとって看過できない存在となるであろう。
ドン・キホーテは2016年12月に鳥取県へ初進出し、本州の都府県全てへの出店を果たした。現在建設中の新店舗は10店以上もあり、今後も店舗網は拡大を続ける見込み。 画像はドン・キホーテ鳥取店(プレスリリースより)
また、「アマゾン・プライム・ナウ」の取り扱い品目は約1万8000点と、「マジカ・プレミアム・ナウ」の当初の取り扱い品目よりも多いものの、生鮮食品の販売は一部のみに留まる。
東京都内ではヨドバシカメラも類似サービスとなる2時間半以内無料配達サービス「ヨドバシ・エクストリーム」を展開しており、取り扱い品目は約43万点と膨大であるものの、取り扱い商品は家電や生活雑貨が中心で、生鮮品は青果を中心とした一部のみとなっている。これら2社は、物流拠点や店舗のあるエリアが非常に限られているため、他社との広域的な提携などを行わない限りは、早期に高速配達サービスの全国拡大や生鮮食品の取り扱いの拡大をおこなう可能性は低い。
一方のドン・キホーテは、「ダイシン百貨店」や大手総合スーパー「サンバード長崎屋」などを傘下に収めたことにより、それぞれのノウハウを生かすかたちで生鮮食品の販売に力を入れる店舗も増えつつあり、一部では「ディスカウントストアらしからぬ生鮮食品の品揃え」を実現させている。そのため、とくに生鮮食品売場を併設している店舗の周辺では、スーパーマーケットで販売されるような、より一層日常生活に密着した商品の高速配達もおこわれることになるであろう。