では、一般の中国人は今回の事件をどう思っているのかというと、多くの中国人は金正男氏を知らない。金正恩党委員長や金正日総書記は中国でも知られているが、金正男氏は、表舞台に出ていないので、ほとんど知られていないのだ。金正恩党委員長の異母兄と報じられ、そんな人がいたんだという感想を持った中国人も少なくないようだ。
その一方で、少数民族の朝鮮族は、金正男氏を知っている人が多く、長春在住の朝鮮族男性は、「金正日総書記の後継者として正恩氏が登場するまで正男氏が朝鮮を発展させてくれると期待していただけに残念です。残された息子さんは違う道で生きて欲しいですね」と話す。
一部では、温和な性格の金正男氏は、親中的な切り札として中国政府が北朝鮮戦略のため庇護していたなどという噂もある。その噂の視点で見ると、昨年来の中韓関係の急速な悪化により、結果的に疎遠になっていた中朝関係が盛り返しつつあったことで、中国政府にとって金正男氏の利用価値が下がってしまっていたともいえる。あくまでも憶測に過ぎないが、今回の一件は、そんな「絶妙なタイミング」を見定めて起きた、、、とも考えられる。
聯合ニュースは、金正男氏の子息など家族をすでにマカオで保護したと報じているが、別の韓国メディアでは、22歳の長男であるハルソル氏はフランスの大学を卒業後、そのままフランスに滞在していると伝えておりとこれまた情報が錯綜している。
<取材・文/中野鷹>