資産家の皇太子、日本人職人によって躍進するマレーシアのサッカークラブ「ジョホール・ダルル・タクジム」

ジョホール州王族皇太子による札束戦略

 JDTの前身である「ジョホールFA」は、1991年に1部リーグで優勝するなど90年代初めまでは強豪チームの一角を占めていたが、その後は2部との昇降格を繰り返すエレベーターチームになっていた。そんな弱小チームに転機が訪れたのは2012年2月、ジョーホール州の王族トゥンク・イスマイル皇太子がジョーホール州サッカー協会の会長に就任したことだった。  イスマイル皇太子は会長に就任するとすぐにジョホールサッカーの大改革に乗り出した。  当時ジョホール州内には、ジョホールFAのほかにプロやアマチュアを含めた複数のチームが活動していたが、これらをすべて統一して、新たに「ジョホール・ダルル・タクジム・フットボールクラブ」を結成することを発表。さらに大物外国人選手の獲得に乗り出し、2013年にリーガ・エスパニョールで得点王に輝いたこともある元スペイン代表FWダニ・グイサを、さらに翌年には元アルゼンチン代表MFパブロ・アイマールを獲得して、国内外のサッカーファンを驚かせた。  金満オーナーの札束攻勢で大物選手を獲得するのは、サッカー界では度々見かける光景だが、JDTの選手獲得は長期的な戦略に基づいたものだと、同クラブのスポーツディレクターであるアリスター・エドワーズ氏は説明する。 「グイサやアイマールといったビッグネームの獲得は、『ジョホールのサッカーが変わった』というインパクトを世間に与えるために必要なステップでした。ただ、それはあくまでも最初のステップ。現在はピッチ上での結果でインパクトを与えることができるので、大金を支払って有名選手を連れてくる必要はなくなっています」  エドワーズ氏の発言を裏付けるように、JDTに現在所属する外国人選手の中で世界的に名前が知られた選手はいないが、2016年シーズンの得点ランキングで1位、2位を独占したアルゼンチン人FWホルヘ・ペレイラ・メンデス、フアン・マルティン・ルセロなどの実力者が揃っており、コストパフォーマンスに優れた的確な選手獲得といえる。
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ワールドクラスのインフラを整備
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