大手企業の下請イジメ是正なるか?「下請Gメン」誕生も効果は限定的!?

――では、下請イジメをどのように是正すればいいのでしょうか? 多田:本気で是正しようと思ったら、やはり罰則強化が王道でしょう。現在の下請法では、罰則の最高は50万円の罰金です。これを労働基準法のように懲役刑まである規定に変えることができれば、一定のアナウンス効果はあるでしょう。  しかし、懲役刑まで用意されている労基法をもってしても長時間労働が是正されないことを考えると、罰則強化にも多くは期待できないと考えます。それよりも、「下請イジメをやると企業イメージが悪くなって損だ」と大企業に本気で思わせることが大事です。  ただ、国にできることは限られています。現在でも、下請法の違反行為を行った企業は公正取引委員会によって企業名が公表されていますが、これが“社会的制裁”というところまで影響があるかといえば、そうなっていないのが実情です。その証拠に、公正取引委員会のホームページで確認できる違反企業の一覧を見ると、結構な有名企業も含まれていますが、これらの企業の業績が悪化したとか、不買運動が起こったとかの話は聞いたことがありません。 ――国以外では、何の要素が大きいとお考えですか? 多田:個人的には、マスコミの役割が大きいと感じています。しかし、有名企業は大手メディアにとって大切な広告主であることや、「下請イジメ」というだけではニュースのインパクトに欠けることから、なかなかこの問題の重要性が伝わらないという構造があります。  ワタミや電通のように、社員の自殺によってようやく問題企業が糾弾されるというのは、なんとも痛ましく、やりきれません。その意味では、イジメを受ける側の中小企業から生の声を吸い上げ、罰則強化などの具体的な政策につなげることができれば、効果は限定的かもしれませんが、この「下請Gメン」も多少は役に立ったと言えるかもしれませんね。

中小企業診断士の多田稔氏

【多田 稔】 中小企業診断士、経営アナリスト。「多田稔中小企業診断士事務所」代表。経営コンサルティング・サービスに携わる傍ら、「シェアーズカフェ・オンライン」などで企業分析・会計に関する記事を執筆
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