労基署臨検の主眼は何か? 勤務管理表改ざんの摘発より重要なこと

帳簿改ざんをめぐるいたちごっこ

 すなわち、帳簿をごまかそうとしている会社に対して、労基署が帳簿と実態の照らし合わせ、乖離があれば摘発するという構図だ。実は、私は、そのことがどうしても気になってしょうがない。果たして、この構図で、労働環境の改善とビジネスパーソンの健康維持という本来目的を本当に適えることができるのか、という点だ。  このように申し上げると、「改ざんを会社に指示するとはもっての他」「会社と社員の間の信頼を損なう極めて深刻な事態であるにもかかわらず、改善に役立たないとは、何を言っているのか」……という声が聞こえてきそうだ。  改ざんが問題であることには、全く同感だ。議論の余地さえない、言語道断で、憤りさえ感じる問題だ。私が申し上げたいことは、今日の労基署の帳簿と実態の照らし合わせに終始していないかということだ。そのことが、企業を改ざんに走らせる、労基署は改ざんを見破るという、いたちごっこの捕り物を加熱させているのではないか。  不正を正すのは当然のことで、労基署のアクションは不正を正す観点で、一点の曇りもなく正しいアクションだ。しかし、帳簿と実態を照らし合わせる臨検方法が、労働環境改善と健康維持からずれてはいまいかと思えてならないのだ。
次のページ
健康被害の未然防止は?
1
2
3
4
チームを動かすファシリテーションのドリル

「1日1分30日」のセルフトレーニングで、会議をうまく誘導し、部下のモチベーションを自然にあげられる!

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会