すなわち、帳簿をごまかそうとしている会社に対して、労基署が帳簿と実態の照らし合わせ、乖離があれば摘発するという構図だ。実は、私は、そのことがどうしても気になってしょうがない。果たして、この構図で、労働環境の改善とビジネスパーソンの健康維持という本来目的を本当に適えることができるのか、という点だ。
このように申し上げると、「改ざんを会社に指示するとはもっての他」「会社と社員の間の信頼を損なう極めて深刻な事態であるにもかかわらず、改善に役立たないとは、何を言っているのか」……という声が聞こえてきそうだ。
改ざんが問題であることには、全く同感だ。議論の余地さえない、言語道断で、憤りさえ感じる問題だ。私が申し上げたいことは、今日の労基署の帳簿と実態の照らし合わせに終始していないかということだ。そのことが、企業を改ざんに走らせる、労基署は改ざんを見破るという、いたちごっこの捕り物を加熱させているのではないか。
不正を正すのは当然のことで、労基署のアクションは不正を正す観点で、一点の曇りもなく正しいアクションだ。しかし、帳簿と実態を照らし合わせる臨検方法が、労働環境改善と健康維持からずれてはいまいかと思えてならないのだ。