JAXAの超小型ロケット、打ち上げ失敗――それでも失われない“民生品活用”の意義と成果

「民生品」は現段階の焦点ではない

 打ち上げ失敗後、メディアの報道では「民生品を使ったことが原因か」、「民生品が焦点」といった報道が相次いだ。  実は、このSS-520-4には、単に人工衛星を飛ばせるようにしただけでなく、そのために必要な技術や部品に、民生品を活用したという特長があった。民生技術、部品は、宇宙専用の技術や部品と比べると製造コストが安いため、同じ性能、あるいはより高い性能ながら、価格を抑えることができる可能性がある。  また、SS-520-4の先端には東京大学が開発した、「TRICOM-1」という質量3kgの超小型衛星が搭載されていた。このTRICOM-1にも民生技術が多く活用されている。もっとも、宇宙開発での民生技術の活用は、ロケットより衛星のほうが進んでいることもあり、TRICOM-1より以前にも民生技術を使った人工衛星は多数打ち上げられている。

SS-520-4に搭載されていたTRICOM-1

 しかし、現段階で民生品だったかどうかを焦点にするのは、明らかなミスリードであると言えよう。今回、飛行中止の理由となった信号のことを「テレメトリー」、またその信号を出す装置のことを「テレメーター」という。SS-520-4に搭載されていたテレメーターはこれまでに飛行実績のあるもので、すなわちこれまでに2機が打ち上げられているSS-520、また30機が打ち上げられているS-520で使用されているものと同型であり、またその中で今回のようなトラブルはなかった。なおかつ、今回のSS-520-4のために新しい部品などは使っていないという。  ただ、逆に言えば、新規の開発品でもなければ民生品も使っていない、これまでに実績のあるテレメーターが問題を起こしたということは、本来ならつまずくはずのないところでつまずいてしまったということであり、ある意味では民生品云々よりも深刻なことかもしれない。  もちろん、第3段や衛星を積んだことで、たとえば振動で機器が破壊されたり、電波のノイズで信号がかき消されたりといったことは考えられるため、あくまで原因や状況が何もわかっていない今の時点で民生品云々を論じるのが時期尚早という話であり、最終的な判断は今後の調査を待つべきだろう。
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