日本のマニアに愛されたタイの「死体博物館」。今は正式に博物館に

解剖実習用の献体が無造作に置かれていた当時

 解剖学博物館の場所は98年当時と変わらない。3階の展示室まで木製の階段で上がっていく。医学生の実習室を備えた棟で、2階には解剖実習室がある。今はドアが固く閉じられ、英語で「進入禁止」と大きな看板が掲げられていた。  当時は2階も自由に出入りができ(本来は禁止だったのかもしれないが、注意されなかった)、夕方の閉館間際に行くと誰もいない実習室の解剖台には明日の解剖実習を待つ献体が多数並べられていた。薄暗い教室に乾燥防止の死体袋に入った献体がただそこにあるという不気味さを今でも憶えている。  今回の取材で久しぶりに訪れた解剖学博物館。驚いたのが、法医学の方は180度方向転換して博物館らしく整備されたにも関わらず、人体標本としてはより興味深いはずの解剖学の方はおよそ20年前とまったく変わっていなかったことだ。 ⇒【画像】はコチラ(画像は閲覧注意) https://hbol.jp/?attachment_id=125035  展示品は基本的には透明のケース内にホルマリンで固定されていて、水頭症の子ども、男女の全身標本、臓器、人骨などがあった。それから結合双生児の標本もいくつかある。結合双生児は以前はシャム双生児と呼んだが、このシャムはタイの旧国名サイアムが日本語訛りになったものだ。タイの固有猫もシャム猫というし、地鶏の軍鶏もタイから来たとされるのでシャモと読む。そもそもシャム双生児の由来はタイ固有の病気だったわけではなく、世界に知れ渡った最初の結合双生児がタイ出身だったからだ。
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「最後の功徳」としての献体
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