プシューケーを探査するサイキの想像図 Image Credit: SSL/Peter Rubin/NASA
ところで、M型小惑星には太陽系の成り立ちの謎だけでなく、もうひとつ大きな可能性が潜んでいる。宇宙の資源として、その金属を利用できるかもしれないのである。
近い将来、あるいは遠い将来、人類が宇宙に進出したとき、生きるために必要な水や酸素をどこで調達すべきかという問題と同時に、宇宙船や居住区、電子部品などをつくるのに必要な金属をどうやって調達するかという問題もある。
重い金属をすべて地球から持っていこうとすると、膨大なエネルギーやお金が必要で、とても現実的ではない。そこで、もしM型小惑星から金属を掘り出して利用することができれば問題は解決する。金属の製錬や加工は必要だが、小惑星の鉱物は純度が高い可能性があること(実際にプシューケーの鉄の純度は高いと考えられている)や、3Dプリンターによって、ロケットのエンジンでも船体でも、必要なものをなんでも自由自在に造れるようになる可能性もある。
さらにM型小惑星には、電子部品にとって必要不可欠なレアメタルもあるのではと期待されており、もし本当に存在し、採り出す方法を確立することができれば、宇宙開発はゴールドラッシュさながらの時代を迎えるかもしれない。
すでに米国では、小惑星からの資源採掘を目指した「小惑星採鉱会社」として、「プラネタリー・リソーシズ」と「ディープ・スペース・インダストリーズ」という2社が2013年に設立されている。もちろん冗談ではなく、出資者の中には英国ヴァージン・グループのリチャード・ブランスン会長や、グーグルの前CEOラリー・ペイジ氏など有力者が名を連ね、手始めに資源が豊富そうな小惑星を見つけるための衛星の開発が実際に行われている。
また2015年11月には、米国で民間による小惑星の資源採掘や利用を認める法律もでき、こうした会社が、実際に小惑星の資源採掘ビジネスを始めることが可能になった。