米中、日中etc.――合作映画はなぜ増える?急成長する中国の映画産業。その特殊事情

庶民の娯楽として定着する映画産業

 それでも、庶民の娯楽として映画市場は広がりを見せている。  現在、中国では新しい映画館が次々と誕生している。多くが各地に誕生している巨大ショッピングモール内に必ずと言っていいほどセットになっている。しかも、日本の多くの映画館よりも設備、施設は新しく巨大なものが多い。その理由は、日本と比べ映画文化が半世紀以上遅れて根付き始めたからだ。そのため、「IMAX」や「4DX」などの最新設備がどこにでもある状態になっている。

巨大ショッピングモール内外ではイベントが開催される

 映画が娯楽として半世紀遅れで広まったため、チケットの買い方も進化の過程を飛ばしており、約7割が団購(中国版グルーポン)サイトで購入している。ネット購入なら日本でもあるが、異なるのは割引率だ。たとえば、団購を使うと4DX映画150元(約2530円)のチケットが、49元(約830円)と3分の1以下で買えたりする。これだと多くが映画館の窓口で買わないのは当然となる。  そんな状況に対して中国政府当局は、2012年に団購での割引率は3割までが望ましいと発表しているがまったく守られていない。政府がこの状況を事実上黙認しているのは、長年、アメリカを中心に対策が求められている海賊版対策のためと言われる。海賊版DVDと映画の価格差が縮まってくれば、映画を見る人が増え、海賊版を購入する人は減り、結果、海賊版を減らすことになるからだ。
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中国との「合作映画」が増える理由
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