2017年はアグリビジネス大再編の年! 化学薬品・種子・アグリビジネスの大半が3社に集約することに

バイエルが興味を抱くモンサントの「GMO技術」

 バイエルの場合はモンサントを買収することによって、<これまでの健康・薬品分野67%とアグリビジネスの分野30%の割合を、ほぼ49%と49%>に製品内容を変える意向を計画している。(参照:「THE WALL STREET JOURNAL」)。特に、バイエルが強い関心を持っているのはモンサントの遺伝子組み換え種子(GMO)である。  GMOのヨーロッパでの普及は難しい。何故なら、EUでは食品表示義務があり、また市民もGMOに批判的であるからだ。バイエルがモンサントを買収する際にも、ヨーロッパではそれに批判的であった。何故なら、モンサントはGMOのパイオニアであるからである。ヨーロッパではバイエルがGMOを積極的にヨーロッパ市場で導入するのではないかと懸念されているのだ。しかし、バイエルはその点は当初からアメリカ市場や中国市場を対象にしたものであると明確に表明していた。  GMOについてアメリカでは盛んに採用されているが、GMOによる作物の身体への危険性を指摘している研究も少なくない。また、GMOの普及によって大量生産が可能になり、既存の種子での栽培が採算ベースに乗らなくなったというケースがメキシコのトウモロコシの栽培であった。これによって、メキシコの農民が職場を失ってアメリカへの移民を余儀なくさせられた。  更にモンサントについては、除草剤ラウンドアップでの健康上の被害も記録されている。その上、それに耐える雑草も生えるようになり、それを更に駆除する新しい除草剤も必要となっている。また、モンサントはサッカリン、DDT、枯葉剤など身体に有害とされる製品を生み出して来た企業で、ヨーロッパでは好意的には受け入れられていない企業なのである。 「危険企業」として名指しされることも少なくないモンサント。バイエルによる買収で、その悪い印象が拭われるかは定かではない。その反面、日本市場ではGMOについての警戒心は消費者の間でもまだ少ない。これから注視して行くべき問題であることは間違いないだろう。 <文/白石和幸 photo by Mike Mozart via flickr(CC BY 2.0)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会