実用化が進む人工知能、“AI脅威論”は非現実的

ワトソン

クイズ回答マシンとして登場したが、コールセンターでの活用が期待されているワトソン

 人工知能(=AI)とは、人間の知能と同じような働きをするコンピューターシステムの総称である。身近なものでいえば、Amazonのレコメンドやグーグル翻訳、フェイスブックの顔認証などに適用されている。AIというと、「全知全能のスーパーコンピュータ」をイメージしそうになるが、AIに詳しいジャーナリストの神崎洋治氏は、「一口に『人工知能』といっても、一般向けの定義付けはまだハッキリとしていません。ロボットの反乱、人類の知性を超えるといった“人工知能脅威論”は、現時点では極めて非現実的」と話す。  現在開発が進められているAIは「ディープラーニング」という学習機能によってごく限られた分野で、人間のように物事を把握・分析できるのだ。たとえば、IBMが開発した「ワトソン」は人間用に書かれたマニュアル文書をなんと1秒2億ページというスピードで読み込み、さらにオペレーターと顧客の会話内容からトラブルの原因を探り当て、複数の解決策を提示してくれる。経験の浅いアルバイトでも、ベテラン並みの対応ができるようサポートするのだ。 「医療の分野では、がん検診や心臓病治療などでAIの活用が注目されています。従来はMRIやレントゲン写真を見て診断できるのは熟練した医師だけでしたが、人工知能と画像認識システムを使えば、時には人間よりも正確にがんを発見できるのです」  自動運転の分野でも同様だ。世界最大の家電ショー「CES2016」でトヨタ自動車が展示した実験では、AIを搭載したミニカー8台が最初は互いにぶつかってしまうが、数時間後には実に滑らかに道を譲り合うようになった。 「問題は人間の運転する車両と共存させる場合。将来的にはレーンを分けるなどの制度作りが必要になるでしょう」  自動運転が実現すれば、高齢者の暴走など人的ミスによる事故は格段に減るかもしれない。
次のページ
AIロボが話相手に!?’17年発売のユニボ
1
2
人工知能がよーくわかる本

最新用語とメカニズムがすぐわかる!

ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会