OneWebの衛星と通信する装置の一例。家の屋根に見える白い饅頭のようなものがその装置で、これを使って衛星との通信と、ネット回線を使ったスマートフォンやタブレットとの通信を行う Image Credit: OneWeb
ところで、多数の小型衛星による衛星インターネット・サービスの展開を考えているのは、OneWebだけではない。イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXもまた、似たようなビジネスの展開を考えている。
スペースXはこれまで、低コストなロケットの開発や、ロケットの再使用によるさらなる低コスト化への挑戦、そして火星への移住構想など、何かと話題を提供してきたが、衛星インターネットにおいても、OneWebとほぼ同じ軌道に、小型衛星をなんと4000機も打ち上げるという構想をもっている。
実はワイラー氏とマスク氏は、もともとこの分野において、グーグルを介して手を結び、同じ一つの計画を進めようとしていた。ただ、詳細は不明ながら何らかの意見の相違があり、ワイラー氏はグーグルを退社。その結果今の、OneWeb対スペースXという構図ができあがった。
OneWebには今回のソフトバンクを始め、かねてより英国のヴァージン・グループや、米国の通信・半導体大手のクアルコム、コカ・コーラなどが出資している。一方のスペースXの衛星インターネット計画にはグーグルが参画している。
両社のうち、どちらがこの分野で覇権を握ることになるのかはわからない。あるいはかつてのイリジウムやテレデシックのように、どちらも撤退することになる可能性もある。
しかし、もしどちらか、あるいはどちらもが成功し、全世界の人々が等しくインターネットを利用することが可能になれば、世界は大きく変わることになるだろう。たとえば世界中に質の高い教育を届けることができるし、既存のあらゆるネットを使ったサービスに30億人の顧客が追加されるということでもある。さらにその30億人の中から新しいサービスを考え、実行する者も現れるだろう。教育からビジネスまであらゆる分野で、とても語り尽くせないほどの多くの、そして大きな変化が起こり、人類の生活がさらに豊かになる可能性が潜んでいる。
OneWebやスペースX、そして彼らに出資するソフトバンクなどは、そうした未来の可能性に賭けているのだろう。
<取材・文・写真/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
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【参考】
・ワンウェブ、ソフトバンクグループなどから12億米ドルの資金調達へ | プレスリリース | ニュース | 企業・IR | ソフトバンクグループ(
http://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2016/20161219_01/)
・OneWeb Announces $1.2 Billion in Funded Capital from SoftBank Group and Other Investors – OneWeb | OneWorld(
http://oneweb.net/press-releases/2016/oneweb-announces-1.2-billion-in-funded-capital-from-softbank-group)
・Home – OneWeb | OneWorld(
http://oneweb.net/#technology)