「ニュー新橋ビル」に再開発計画浮上。雑多な雰囲気の「サラリーマンの聖地」を惜しむ声
「サラリーマンのオアシス」として知られる新橋駅前の「ニュー新橋ビル」に、周辺のSL広場や新橋柳通商店会を含む1万平方メートルの大型再開発事業が立ち上がっていることを11月4日の日経新聞や5日の朝日新聞などが報じた。
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建物の老朽化が進んでいたことで何度か再開発の話も持ち上がったのだが、テナントの地権者が複数いるため、なかなか話がまとまらなかったこともあり、いい意味で猥雑さが保たれたままだったのだが……。
果たして、この再開発計画でニュー新橋ビルはいったいどう変貌してしまうのか?
報道によれば計画では、30階建て前後で120~130メートルのビルを2棟以上建てて、なるべく現在の同エリアで営業している店舗やオフィスが入る予定だというが、果たしてどうなるのだろうか。
同ビルの商店会関係者はこう語る。
「確かに前から商店会の中でも建物の老朽化が進んでいるのでどうにかしなくちゃという声はあったんです。で、新聞では報じられたように再開発をしようという組織はできたんですが、本当に具体的なところはこれからなんです」
別の店舗関係者からは次のような声も聞かれた。
「再開発して大きなビルとなればテナント料がいくらになるかもわからない。今のような店舗は入っていられないのでは……」
やはり、今のような個性的な小さな店がひしめくのが継続するのは無理ではないかと不安視する声も少なくない。
また、別の見方もあるようだ。
「ニュー新橋ビルは数年前から中国系のマッサージ店が増えて、既存の店舗関係者との間でトラブルも少なくなかった。あのビルの床に線が引いてあるのを見たことありますか? あれはフロアにはみ出して呼び込みしたり看板を設置するのを注意するために線を引いたという話です。今回の再開発も、ああした中国系の店舗に出て行ってもらいたいという目論見もあったのでは……」(近隣の不動産店)
銀座からも近く、一等地としてさまざまな業種にとって魅力的な土地、新橋。かつては貨物駅があり、廃駅後は広大な空き地状態だった汐留側や、かつてソープランドすら存在していた環状二号線界隈の雑多な商店街はすっかり開発されてしまった。そんな新橋の駅前にありながら、いわゆるどこにでもあるような「オシャレ系」チェーンなども少なく、猥雑でありながら個性的な店舗が生き残ってきたニュー新橋ビルは、その独特な雰囲気で愛され続けてきた。
この再開発が報道された後、周辺のサラリーマンに話を聞いてると、一様に「ここもアメリカ風のチェーン系カフェとかが入った普通のビルになったらつまらない」「再開発されたら、今入ってるジーパン屋とかマッサージ屋とかどうやって賃料払ってるかわからないような小さな店はどうなってしまうのか。個性が失われそう」という声が聞こえた。
解体・建設が始まるのは2020年の東京五輪以降と言われるが、果たしてサラリーマンの聖地はどうなってしまうのだろうか?<取材・文・写真/HBO取材班>
ニュー新橋ビルなどがある新橋一帯は、戦後日本最大の闇市「新生マーケット」があった場所である。戦後、関東松田組が仕切っていたこのマーケットは、ヤクザ映画でもその名を知られる松田芳子(松田組組長の松田義一の死後、跡目を継いだ)が君臨し、シマを狙ってきた外国人勢力を軍の横流れ品である戦闘機用機関銃を掃射して撃退するという「新橋事件」などが起きる混沌とした土地であった。
1971年に開業してからも、闇市の跡地にあったバーや飲食店が入居した。ビル自体も当初から闇市の名残りを残すように、敢えて猥雑さを前面に出して設計されたという。その名残りは現在にも引き継がれている。
なにしろ、地下は雑居ビル内部なのに赤ちょうちんが灯るスナック街のような様相だ。さらに、各階にある喫茶店は、このご時世に全席喫煙可能なところが多い。飲食店も、この一等地にありながらなぜ? と思うようなジューススタンドにB級グルメが楽しめる定食屋もある。かと思えば、一部上場企業の社長が食べに来るという隠れた名店もあったりするのだ。
さらには上階にある雀荘や囲碁会館には平日昼なのに紳士たちで賑わっている。他にも、レトロゲームを置くゲームセンター、パチンコ屋に中国人女性が客引きをするマッサージ店、ファッションヘルスにアダルトグッズショップなど猥雑な魅力に満ち溢れたビルで、熱狂的な支持者こそいないものの周辺のサラリーマンにとっては「開発されて洒落た店ばかりになった反対側(汐留側)よりも落ち着く」という一種のオアシス的存在なのである。
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