通常、検察は逮捕して20日間の拘留期限ギリギリに起訴するときに同時に刑事事件化させるものです。そう考えると、刑事事件化のためには歴代3社長を12月初旬には逮捕していなくてはならず、もはや佐渡委員長の任期中の事件化は現実的ではありません。では、次期委員長のもとで事件化されるのか?
長谷川氏は今回の判決で名古屋高裁に“助けられた身”。仮に二審でも美濃加茂市長に無罪が言い渡されていたら、無理筋で事件化させた長谷川氏の経歴に傷がついたのは間違いありません。すんなりと次期証取委委員長の座に就けなくなった可能性もありました。その可能性が逆転有罪で解消されたのですから、検察に敵対してまで東芝を刑事告発しようなどと考えるはずもありません(検察官と裁判官の間には判検交流という人事交流制度があります)。
そもそも美濃加茂市長の裁判は「藤井市長に30万円渡した」という贈賄側1人の証言だけで起訴した、典型的な無理筋の事件でした。一審の無罪判決は当然のことと言えました。これを二審でひっくり返したということは、「配慮」が働いたと考えざるをえません。当然、最高裁まで争われるでしょうが、二審でひっくり返した以上、再逆転で無罪になる可能性は完全に“0”です。こうして長谷川次期委員長のもと、東芝の不正会計問題は風化してくことになるのです……。
【闇株新聞】
’10年に創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券マン時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者などのプロから注目を集めることに。現在、新著を執筆中