“手のひらサイズ”の人工衛星が拓く宇宙革命!ブームになりつつある超小型衛星に秘められた可能性とは?

キューブサットとは何か

キューブサットの一つ。10cm四方の立方体をしている Image Credit: NASA

 キューブサットとは、10cm四方、質量1kgの立方体(キューブ)の形をした超小型衛星のこと。また、この立方体を2個、3個つなげたような形・大きさをしたものもあるが、いずれにしても全長数十cm、質量1kgから数kgの、両手のひらで抱えられるほどの大きさしかない。  これほど小さな人工衛星がつくれるようになった背景には、電子部品の小型化、高性能化がある。一昔前と比べ、コンピューターやセンサーなどは小さくなった上に高性能になり、数十年前まで数トンの大きさの衛星が必要だったことが、今では数kg程度の衛星でも実現できるようになった。  また、そうした電子部品の耐久性が全体的に高くなったことも大きい。従来、宇宙用部品は民生品と比べ、性能は劣る一方で高価というのが常識だった。宇宙は真空で、さらに強い放射線も飛び交っており、電子機器や機械にとってはきわめて厳しい環境である。しかも人工衛星は一度宇宙に打ち上げられると、故障しても修理しに行くことができない。  そのため、宇宙用部品には「絶対に壊れないこと」が重要視され、特殊な造り方が必要な上に、厳しい試験を繰り返す必要もある。結果としてコストがかさみ、また新しい部品を作ると改めて試験を行わなければならないため、たとえ旧式で性能が劣っていても、すでに宇宙用部品として実績や信頼性のある部品が使われていた。  しかし近年、巷にあふれる民生品でも耐久性が高くなり、宇宙でも問題なく使えるものが現れはじめた。そのため小型化、高性能化と相まって、それこそ秋葉原のパーツ屋で手に入るような部品で人工衛星を造ったり、あるいはスマートフォンをそのまま打ち上げたりといった感覚で、安価に、手軽に、誰でも、そしてそこそこの性能の人工衛星が造れるようになったのだ(もちろんそのまま使うわけではなく、ある程度の試験などは行う必要はある)。
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大学生もキューブサット開発
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