何しろ楽天は海外企業の買収に伴って、被買収企業に支払うプレミアムである「のれん」をたくさん計上しており、その総額は4000億円近くにものぼるのだ。
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これらの資産が焦げ付いてしまえば、楽天は一気に赤字転落してしまうほどのリスクを常に抱えている。とりわけ、1000億円近くと最大規模ののれんを計上しているのは’14年に買収したコミュニケーションアプリの「Viber」を手がけるViber社。同社の動向は気になる。
同サービスは、ダウンロード数では世界で8億回という桁違いの規模を誇るが、「LINE」などのコミュニケーションアプリは、継続的に使われるものは首位に限られるという傾向がある。
日本とタイ、台湾、インドネシアはLINEが強く、その他のアジア各国では中国のTencent社が手がける「Wechat」が、北米などではFacebookの「WhatsApp」がデファクトスタンダードとなっており、Viberが割って入るには、ビジネス向けに特化するなどかなりの工夫が必要だ。買収が行われた’14年後半以降、ダウンロード数の伸びもじわじわ鈍化していることが見て取れるのも気がかりである。
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このサービスに、楽天が支払った約9億ドルの価値があるのか、これから真価が問われていく。スマホでのフリマ業界に参入すべく買収した「フリル」のFablicにしても、国内の圧倒的首位はメルカリであるように、楽天は業界2位以下のサービスを買収することが多い。
放っておくと業界首位に市場を押さえられてしまう企業なだけに、楽天が本業のユーザー基盤を使ったり、自社の優秀な人材を投入するなどして成長に導けなければ、減損のリスクは案外すぐに顕在化してしまう。
金融事業の拡大を糧に成長を続ける楽天にとって、買収した資産を目減りさせずにいられるかどうかがこれからも肝であり続けるのだ。
<文/大熊将八>
おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『
進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは
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