NAFTA批判をし、不法移民追放を叫ぶトランプの「不都合な真実」

photo by Gage Skidmore via flickr(CC BY-SA 2.0)

 米国の次期大統領トランプ氏は11月13日のCBSテレビインタビューで、犯罪歴のある不法移民200~300万人をまず強制送還する予定でいることを表明した。同氏は選挙キャンペーン中は「国境のない国は国家ではない、「米国を再び偉大な国にする」などと言って、米国の不法移民を全員強制送還させると表明していた。  現在、米国にはラテン系の移民は5530万人いる。その内の1100万人が不法に入国した移民と推定されている。そのほぼ6割はメキシコからの移民である。それ以外は中米やキューバからの移民である。  また、トランプ氏は1994年から実施されている北米自由貿易協定(NAFTA)は米国に被害をもたらす協定であるとして、この見直しをするとしている。その根拠にあるのは、<この15年間に6万社が消滅し、480万人の米国人が職場を失った>ということである。(参照『El Pais』)  これは米国の企業が労賃の安いメキシコに工場を移転することや、移民による安価な労働力が米国市場で米国人を失業に追い込んだということから発生した問題である。その一部がアメリカ労働総同盟(AFL-CIO)によって分析されている。それによると、<米国の工業部門では70万人が職を失った>ということ。その内訳は、経済政策研究所(EPI)によると、<一般産業部門で41万5000人、電子機器部門15万人、自動車産業10万8000人>となっている。トランプ氏はこのNAFTAの見直しをすると選挙中に表明して有権者から支持を集めた。(参照『BBC』)
次のページ
NAFTAは米国だけに「災厄」だったのか?
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会