トランプ氏の犯罪歴のある不法移民を200~300万人をまず強制送還する予定でいるという発言を前に、メキシコ政府が最も懸念しているのは、それが経済面に及ぼす影響だとしている。既に、メキシコの通貨ペソが対ドルレート、15%下落している。また、メキシコ移民者に対しては強制送還の可能性のあることを踏まえて、メキシコ政府は<米国にある50の領事館にメキシコ移民への必要な処置をとるように>と通達する予定だとしている。また、ペーニャ・ニエト大統領はトランプ氏を彼の大統領就任の前までに会見したいと望み、それをトランプ氏にも伝えているという。なお、同大統領がこの問題に戦略的にどのように取り組むのか明確にはされていない。しかし、トランプ氏による経済的脅威の前にメキシコ政府は抵抗する準備をしている最中だとしている。大統領選挙中もペーニャ・ニエト大統領は必要とあらば経済戦争をする構えだという考えを表明していた。(参照『
El Pais』)
米国の主要都市ニューヨーク、ロサンジェルス、シカゴの市長は次期大統領トランプ氏の不法移民の強制送還の適用は受け付けないという声明を発表した。フィラデルフィア、シアトル、ミネアポリス、プロビデンスなどおよそ300の都市は民主党の勢力下にあり同様の姿勢を見せているという。米国の大都市などは中央政府の行政の及ばない独立した自治行政能力をもっており、例えば、シカゴのラーム・エマニュエル市長は<「君たち(不法移民者)はシカゴは安全だ。シカゴ市が支援する」>と活動家、下院議員、少数民族代表らに囲まれて14日に公言した。また、シアトルのエド・マレー市長も<「唯一、アメリカ人ができることはトランプの命令に従わないことだ」>と述べた。(参照『
El Mundo』)
メキシコは米国への麻薬の最大の供給国である。その意味で米国にいるメキシコの麻薬犯罪者への取り締まりは厳しくすべきであろう。しかし、不法移民の多くはNAFTAによる被害者であるということも認識されるべきである。(参照『
El Pais』)
<文/白石和幸 photo by
Gage Skidmore via flickr(CC BY-SA 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。