日銀サプライズ緩和が知らせる7-9月期GDPと増税の行方
2014.11.01
https://hbol.jp/11722 )を。
果たして、なぜ日銀は市場関係者が驚くほどの異常事態を引き起こしてまで追加緩和を行ったのだろうか?
経済アナリストの新光一郎氏は「1つには物価が伸び悩んでいるから」と話す。
「追加緩和の直前に9月の消費者物価指数が発表されましたが、コア指数は前年同月比3%の上昇にとどまりでした。1年4か月連続で上昇はしているが、今年5月の3.4%をピークに伸び率は鈍化している。今回の金融政策決定会合でも、『物価面ではこのところ消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動き(中略)が、物価の下押し要因として働いている』と指摘されています。消費増税分の2%を差し引くと、直近の物価上昇率は1%。これでは、日銀が設定する2%の物価目標が達成できないと考え、追加緩和に踏み切ったと考えられます」
ただし、これはあくまで建て前。新氏も含めてマーケット関係者の見方は「消費増税に向けた布石」という点で一致している。
安倍首相は12月初旬に消費税を引き上げるか否かの決断をすると公言しているが、株価が落ち込んでいたら、国民の反発を買いかねない。日銀は消費増税に向けた援護射撃を行ったというわけだ。
さらに、「株価を押し上げるだけでなく、安倍政権の政治とカネの問題を打ち消す効果も抜群だった」(全国紙記者)という見方をする人も少なくないが……。闇株新聞氏の見方は若干異なる。
「FRBが10月29日に量的緩和終了を宣言したように、アメリカの景気は上向いています。そんなアメリカは、9月のG20でルー財務長官が『日本の成長鈍化は期待外れ』とコメントしたように、自国の景気回復にまで水を差しかねない日本の消費増税と成長鈍化を非難してきました。おそらく安倍政権に対して、消費増税を見送るように圧力をかけていたはずです。それもあって、最近の安倍首相は消費増税に消極的になっていましたが、自民党内の主流派や財務省は完全に増税一直線。仮に見送りとなれば、来年度予算編成が年をまたぐのは必至なうえに、大幅に予算の圧縮を迫られますからね。つまり、増税しか考えていない財務相と、『増税したいけど、そのせいで景気減速した場合の責任は自分では取りたくない』と考える“ポスト安倍”を狙った連中の意を汲んだ追加緩和の可能性のほうが高い。『追加緩和するから、しっかり増税しなさい』というメッセージです。そこから裏読みすると、増税するか否かの判断指標になる今7-9月期GDPが予想以上に落ち込んでいる可能性もあります。11月17日に速報値が出る予定ですが、すでに参考データは上がってきているはずです。7-9月期GDPが芳しくなくても、増税すべきという路線を引くための追加緩和と思えてならない……」
どっちにしろ、異常な量的緩和の後の消費増税となれば、その後の相場は目も当てられない状況になるのは必至。かといって、現時点で230兆円以上の国債を保有してしまっている日銀にはさらなる追加緩和の余地はないという。今回のサプライズ緩和はアベノミクス相場を崩壊させる引き金なのかもしれない……。
<取材・文/池垣完(本誌)>
日銀のサプライズ追加緩和が賛否両論呼んでいる。10月31日13時40分頃に公表されるや否や、日経平均は爆騰。15時の終値で前日比755円の上昇を見せたのだ。
しかし、そのサプライズ緩和には例にないほど強引とも言える点が目立ち、首をひねる市場関係者も少なくない。
※その異常性については、前編「10・31日銀のサプライズ緩和に見る「異常性」とは?」(
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