サステナブルな食肉の供給を実現するためには、どうすればよいか。人工肉のアイディアは、この問いから生まれた。家畜から細胞を単離して培養し、筋肉組織などに育てて、人工的に肉を作る。人工肉の培養に、広大な土地はいらない。家畜の飼料にするための植物を育てる必要もない。将来は、タンクに入った培養液中で細胞を増やし、人工培養肉を効率的に生産できる可能性がある。
人工培養肉は、環境にフレンドリーなだけではない。家畜を殺さずに済むので、動物フレンドリーでもある。動物愛護の観点からも、人工培養肉の重要性は高い。また、培養は無菌的な環境で行われるため、家畜に使うような抗生物質もむやみに使用する必要はない。抗生物質耐性菌を生じさせるリスクも減らせるのである。
2013年には、マサチューセッツ工科大学の研究者が培養したウシの人工肉の試食会が開かれた。試食した人の評価もまずまずだったようだ。このとき、ハンバーガーに使用する大きさの人工肉一枚にかかるコストは32万5千USドルだった。バイオベンチャー企業「Memphis」によれば、近々このコストも1キロあたり70USドルにまで下げられるとしている。人工培養肉の市場へのリリースは、2021年を目指している。人工肉の価格がたとえ割高だとしても、あえて人工肉を購買するような意識の高い消費者も少なくないだろう。