米国で波紋を呼ぶ「隠れトランプ」の告白~分断されるアメリカ

 そしてノマニさんが隠れトランプになった大きなきっかけは、民主党候補ヒラリー・クリントン氏とサウジアラビア、カタールの関係だったという。ウィキリークスで暴露されたメールによって、クリントン氏が、両国がイスラム過激派テロリストを秘密裏に支援していると知りながらその2カ国から巨額の献金を受けていたことが明らかになった。「私はトランプ氏のセクハラ発言についてロッカールームの会話だという言い訳は許容できないし、米国とメキシコの間に壁を作ることにもイスラム教徒の入国禁止にも反対だ。けれども、クリントン氏の支持はもうできなくなった」という。  ノマニさんは一般的な「隠れトランプ」とはタイプが違うが「普通のアメリカ人が、自分と同じように苦しい生活をしている」という訴えは、米国の多くの庶民が共感する部分だろう。  筆者は一年の半分はニューヨークに住んでいるが、オバマケアが始まってから医療費や健康保険料が上がったということはよく耳にする。ある知人は健康保険料を月に10万円払っているそうだが、自分はそんな保険料は払えないし、かといって保険なしで診療を受ければ1回に10万円や20万円かかるのが当たり前だと聞くため病院にも行けない。住居事情についても深刻で、ニューヨークでまともにアパートを借りるとすると、それほど環境の良くない地区のオンボロワンルームでさえ月15万円以上はするし、1年ごとに更新するたび家賃が上がる。ニューヨークには低所得者向けの住居というものがあり、応募して審査に通れば3分の1以下の家賃で借りられ更新ごとの値上げもないため、低所得者向けのアパートを借りられる人が心底うらやましくなる。トランプ支持者の典型的特徴は「田舎・男・中間層」とされているが、都会でも中間層はやはり苦しいと感じる。
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