現在、地域公共政策士には大学の学部レベルである「初級地域公共政策士」と、大学院レベルである「地域公共政策士」の2種類がある。
そのうち、地域公共政策士のプログラムにはCOLPUが提供する「特別講義」と、実際に問題を抱えた自治体に入り、具体的な政策提言を行う「キャップストーン・プログラム」が含まれる。
「キャップストーン・プログラムでは、学習者がチームを組んで地域の方々に解決策、あるいは分析の結果を提供します。それを、現場の方々に提示していくプロセスを踏みます。
たとえば、京都の町屋を利用してアーティストの創作拠点としたり、地元と交流したりするための事業を提案したりしました。これには僕も少し関わっていたんですけれどもね」(新川氏)
さらに、定松氏はこう続ける。
「他にも天橋立のバリアフリー化のために、観光協会と組んで現地調査に入り、バリアフリーマップを作ったり……。小学校に実際に入ってアンケート調査を実施し、1年くらいかけてコミュニティと学校の関係を再検討をしたこともあります。他にも空いている民家のスペースを地域の子どものための野菜園を設えるプロジェクトを生み出したケースもあります。
野菜園づくりに携わった受講者の方は、キャップストーン・プログラムを終えた後も、そのままスタッフとして従事してらっしゃいます」(定松氏)
天橋立のバリアフリー化にも貢献
地域公共政策士の登場によって、世間の風向きはどう変わってきたのだろうか。
「私どもをモデルに、地域特性を打ち出しつつ、職業資格と教育資格を併せ持ったような資格制度がどんどん生まれてきているのかなと思います。その意味では、『地域公共政策士』が先鞭をつけたと言えるかもしれません」(新川氏)
「最近では、ある大学が『防災士』という資格を学生に受講してもらい、『地域のコミュニティに参加して活動しましたよ』と進路の際にPRしている例もあり、地域社会の中で育つ人間力が重視されています。地域公共政策士の資格取得者の中には、行政職に就いた後、政策提案をどんどん出したり、プロジェクトの中でリーダー的な役割を発揮されている方もおられ、資格取得から獲得した能力を発揮されている方もいます」(定松氏)
今では、内閣府が主導する「地方創生カレッジ」(地方創生を志す人材にeラーニングコンテンツを提供する事業)にカリキュラムを提供し、さらなる連携の広がりを目指しているという。
「学部レベルだけではなく、大学院レベルでしっかり教育を受けて、地域活性の資格を取得できる仕組みがあるという認知を全国に波及させていきたいですね。地方だけでなく東京にも、こうした動きに注目してくださる方もいらっしゃいますが、もともとプログラムに関わって来た大学からはまだまだ広げられていないので」(新川氏)