日本はただの「顧客」だった? 最新鋭戦闘機F35をめぐる駆け引き

 ただ、よく考えてみればちょっと不思議だ。  なぜなら2014年12月には、「(F35戦闘機の)機体の整備拠点については、2018年初期までに日本及びオーストラリアに設置すること」(参照:『防衛省』)と、米国防省はすでに決定しているのだ。北太平洋エリアを担当するのが日本、南太平洋がオーストラリア--そう決まっていたはずだ。  F35の整備には大きく分けてふたつある。  ひとつは「機体の整備」(JSF Airframe Maintenance, Repair, Overhaul and Upgrade、MRO&U)で、通常の整備、点検、修理、交換など。  もうひとつは「重整備(heavy maintenance)」。エンジン内部まで分解し、検査を要する複雑かつ高度な整備作業だ。F35の場合、戦闘システムの機密性を保つために複数のブラックボックスを内蔵しており、重整備ではこれらを取り外しそのまま米国本土に送らねばならない 。(参照:『The Australian』)

整備拠点の棲み分けはできていたはずなのに……

 日本の場合「機体の整備」を三菱重工小牧南工場(愛知県)、重整備をIHI瑞穂工場(東京都)で行うとされた。IHIは日本向けF35のエンジン(Pratt&Whitney F135)について米プラット&ホイットニー社と共同生産することで合意済みだ。  オーストラリアの整備拠点は、NSW州のウィリアムタウン空軍基地とQLD州のアンバレー空軍基地とみられていた。  きちんと棲み分けはできていたはずなのに、なぜ豪国防相らはアメリカに出向き、整備拠点を強調する必要があったのか。  国防産業相の報道官は取材に対し「パイン国防産業相が10月に米国を訪問したのは、車輪、電子機器、無線システムなどJSF部品の整備拠点として、オーストラリアの能力をプロモーションするため」と回答している。
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