全米を仰天させたトランプ夫人のブラウス。ヒラリーvsメラニア夫人のファッション対決

パンツスーツに込められた意味

 女性政治家にとってのファッションの意義を熟知しているヒラリーは、服装にどんな意味を込めているのでしょうか。ファースト・レディ時代にはフェミニンな装いに身を包んでいたヒラリーですが、上院議員に就任して以降、機能的なパンツスーツ姿がトレードマークとなりました。ツイッターの自己紹介欄では「妻・母・祖母・女性と子どもの擁護者・大統領夫人・上院議員・国務長官・2016年大統領候補」などの肩書きに「パンツスーツ愛好家(pantsuit aficionado)」と加える茶目っ気を見せています。  英語には「主導権を握る」という意味の「wear the pants(ズボンを履く)」という言い回しがあります。欧米社会は伝統的に「ズボンを履く人」、すなわち男性が支配していたことから生まれた慣用句です。ヒラリーは文字通り「ズボンを履く人」となったことで、「政治家の妻」から「政治家」へと転身したことを印象づけました。  ヒラリーの生まれた1940年代の米国では、まだ女性のズボン着用はカジュアルな場面に限られていました。ヒラリーが進学したウェルズリー女子大学でも、「改まった席ではスカートを着用すること」という決まりがありました。この「スカート・ルール」を1969年に廃止させたのが、当時の学生自治会長だったヒラリーです。また米国上院議会では、1993年まで女性議員のスカート着用が義務付けられていました。ヒラリーのパンツスーツ姿には、こうした因習を打破する意図もあったのでしょう。  いつも同じような服を着ていれば、ファッションを取り沙汰されることはなくなります。ヒラリーは常時パンツスーツを着用することで、外見よりも実務能力に関心を集めました。また日常的な選択肢の幅を狭めると、思考力の消耗を防ぐ効果も狙えます。オバマ大統領は「何を食べるか、何を着るかなどは自分で決めないんだ。他に決断を迫られる命題が山のようにあるからね」と語っています。アップル社を生んだスティーブ・ジョブスが常に黒セーターにジーンズ姿だったこと、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグがグレーの無地Tシャツしか着ないことなども、同じ理由からでしょう。ヒラリーが制服のようにパンツスーツを着るのは、仕事の能率を上げるのに好都合なためかもしれません。

ヒラリーのお抱えデザイナー、ラルフ・ローレン

 大統領選が始動して以来、ヒラリーが公の場で着用するのは、決まってラルフ・ローレンのパンツスーツです。ニューヨークの貧困地区に生まれたラルフ・ローレンは、ネクタイのセールスマンから世界屈指のデザイナーに出世して、「アメリカン・ドリーム」を実現させました。米国オリンピック代表団の制服をデザインし、近年では生産拠点も米国内に置くラルフ・ローレンは、大統領候補の専属デザイナーとして文句のつけようのない人材といえます。  一方のトランプが好んで着用するのは、イタリアの高級ブランド・ブリオーニのスーツです。またモデル出身のメラニア夫人も、欧州デザイナーの服を愛好することで知られ、前述のブラウスもイタリアブランド・グッチのものです。ミシェル・オバマ大統領夫人が、新進気鋭の米国デザイナーのドレスを多く用いるのとは対照的です。 「偉大なアメリカを取り戻そう(Make America Great Again)」をスローガンに掲げながらも、イタリアの服に身を包み、ドイツ車のベンツを愛用し、中国の建材でビルを建て、ロシアのプーチン大統領を礼賛するトランプ。米国内の雇用創出を標榜する人物としては、言行不一致の感が否めません。
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白一色で勝負したヒラリーの決意とは?
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