「最低賃金改定は消費の回復につながらない」半数以上の企業が回答――帝国データバンク調査で判明

 そして、今回の最低賃金の引き上げは今後の消費回復に効果があるかと、尋ねたところ、「ある」と回答した企業は10.2%だった。一方で「ない」は53.7%と半数を超え、最低賃金の引き上げが消費の回復に結びつくかについては懐疑的な企業が目立った。主な声は以下の通り。 「家計の収支構造が変化しているなか、一概に所得を増やしたからといって消費活動が好転するとは言えない」(自動車車体・付随車製造、北海道) 「非正規雇用者の増加に歯止めがかからない状況で、最低賃金の引き上げだけで今後の消費回復に効果があるとは考えられない。根本的な雇用対策、生涯賃金レベルが改善されなければ意味がない」(農業協同組合、大阪府)

採用時の賃金には依然として乖離

 こうした結果を受けて、帝国データバンクは調査をこう締めくくっている。 「今回の引き上げ額は‘02年度以降で過去最大となったが、個人消費の弱含みが続くなかで、賃金の上昇は消費改善の基盤となることが期待される。本調査によると、今回の改定を受けて3割を超える企業が給与体系の見直しを実施(検討)していた。  また、最低賃金の引き上げが自社の業績に『マイナスの影響がある』と考えている企業も2割を超えており、なかでも、非正社員を多く抱える『飲食店』や『飲食料品小売』『家具類小売』などを含む『小売』において、引き上げ額と業績への影響との関連が顕著に表れていた。  他方、従業員を採用する際の最低時給は、最低賃金を平均して135円上回っている。最低賃金の地域間格差は幾分縮小したとされるものの、実際の採用時の賃金には依然として乖離が生じていることが明らかとなった。ただし、最低賃金の引き上げで消費の回復につながると考える企業が少ないなかで、コスト負担増加に対する企業の懸念を払しょくする対策が同時に投入される必要がある」 参照:帝国データバンク「第4回中国進出企業実態調査」 <取材・文/HBO取材班>
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