これらの要因に加えて、今回の中国との取引でのドル離れを決定づけたもうひとつ理由がある。
中国はイランの制裁下でも積極的に同国からの原油を輸入していた。その関係から両国の信頼は厚い。その関係もあって、サウジが中国に原油取引で有利な条件を提供しなければ、中国はイランからの原油の輸入を増やし、サウジからの輸入を減らす可能性があるからである。しかも、現在のサウジは原油価格の長期下落で財政難にある。サウジにとって一番の顧客である中国が原油の輸入をイランに軸を置くようになることは絶対に避けねばらないのである。
サウジのドル離れは湾岸諸国もそれに追随するようになる可能性がある。米国の中東における影響力は8年のオバマ政権で一挙に大きく後退することになったかもしれない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。