閉店ドミノのセブン&アイ。「セブンイレブン一強」がグループ全体を「背水の陣」に追い込む!

業績「大幅下方修正」の衝撃

 さらに、セブンアンドアイホールディングスが性急なリストラとエイチツーオーリテイリングとの業務資本提携に至った背景にあるのが「井坂新体制の実績づくり」だ。  カリスマ経営者であった鈴木敏文CEOの電撃辞任後、今年5月に就任したばかりの井阪隆一社長としては、セブンアンドアイホールディングスの大株主であり「もの言う株主」としても知られる米ファンド「サード・ポイント」に対して「わかりやすい経営改善策」を示すことが急務であったのだ。  もう1つ、こういった性急な経営改革を行う背景には、事業の中核である「セブンイレブン」も安泰とは言えない状態となっていることも大きいであろう。  セブンアンドアイホールディングスは9月30日に2017年2月期のグループの業績予想を大幅に下方修正することを発表している。このなかで、グループの純利益は従来予想の1720億円から大きく減って800億円になる見通しであるほか、不振が続くそごう・西武、イトーヨーカドーの減損処理(のれん減損、不良在庫の一掃などに起因するもの)により、606億円の損失を計上することを明らかにしている。しかし、最も特筆すべきことは、これまで稼ぎ頭であった「コンビニエンスストア事業」(セブンイレブン)においても大幅な業績の下方修正が行われ、営業収益が前期割れとなる見込みが発表されたことだ。  実は、この業績の下方修正には、世界的な原油安も大きく影響している。アメリカなどのセブンイレブンは、セブンイレブンが運営するガソリンスタンドを併設した店舗が多く、原油価格や為替相場がセブンイレブン本体の業績に大きく関わってくるのだ。

ガソリンスタンドを併設するセブンイレブン(シンガポール)

 このように、セブンアンドアイホールディングスにとってグループの屋台骨であるセブンイレブンは、他事業以上に世界情勢に大きく翻弄されるという危うさも秘めている。 コンビニ各社の経営統合が進み、競争が激化する昨今。「背水の陣」ともいうべき「セブンイレブン1強状態」を推し進めることは、果たしてグループ全体にとって吉と出るか、凶と出るか。また、関西の雄・H2Oリテイリングとの業務資本提携が、大きな相乗効果を上げることができるのか否か。セブンアンドアイホールディングスの今後が注目される。

阪神・神戸三宮駅に出店するそごう神戸店。1933年に開店した歴史ある駅ビル百貨店は、開店から約90年を経て阪急阪神グループの運営となる

<取材・文・撮影/都市商業研究所> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・バスタ新宿、ファミリーマートが出店へ-ようやく決まったコンビニ出店ABAB赤札堂、創業100周年-東天紅・小泉グループの中核企業エブリワン・ココストア九州、2016年末までに「RICストア」に改称-人気のベーカリーも存続
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会