ビジネス書を読み漁る人ほどメンタルが弱い理由

人生の成功を左右するのは知性ではなく自己管理能力

 たとえば、2015年にスターリング大学が行った調査では、約17,000人のセルフコントロール能力を調べたうえで、次のような結論を出しています(3)。 「自己コントロール能力の有無は、職業上の成功を予想する重要な指標になっていた。セルフコントロール力の重要性は、知性の高さを上回る」  確かに頭の良さも重要ですが、成功においてもっとも大事なのは、目先の欲望に打ち勝てるだけの意志力。つまり、ビジネス書を読んでもセルフコントロール能力に何の影響もない時点で、読書と成功の関係にも疑問符がついてしまうわけです。  先に取り上げた論文は、最後にこう結論づけています。 「このデータは『ビジネス書には効果がない』ことを示しているようだ。そもそも、多くのビジネス書ファンは、年に何冊もの本を買う傾向がある。この事実だけを見ても、ビジネス書の効果に疑問を持つのは当然だろう。論理的に考えれば、本当にビジネス書に効果があるなら、1冊を読むだけでも問題を解決するには十分なはずだ」  もちろん、仕事に必要な専門知識を得るために本を読むのは有効でしょう。しかし、のべつまくなしに冊数を重ねたところで、人格の向上や成功にはつながらず、たんなるビジネス書ジャンキーを生むだけです。そう考えると、ビジネス書を読むと成功するのではなく、もともと成功するだけの能力を持った人ほど読書が好きなだけなのでしょう。ビジネス書が好きな人は、仕事の不安やストレスから逃れるために読書をしていないか、いまいちど自分に問いかけてみるといいかもしれません。 1.Catherine Raymond, et al. “Self-help Books: Stressed Readers Or Stressful Reading?”(2015) 2.ウォルター・ミシェル「マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 」 3.Michael Daly, et al. “Childhood Self-Control and Unemployment Throughout the Life Span Evidence From Two British Cohort Studies” <文/Yu Suzuki 写真/ぱくたそ > 月間100万PVのアンチエイジングブログ「パレオな男」(http://yuchrszk.blogspot.co.id/)管理人。「120歳まで生きること」を目標に、日々健康維持に励んでいる。アンチエイジング、トレーニング、メンタルなど多岐にわたり高度な知見を発信している。NASM®公認パーソナルトレーナー。あまりに不摂生な暮らしのせいで体を壊し、一念発起で13キロのダイエットに成功。その勢いでアンチエイジングにのめり込む。10月31日、初の著書『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』(扶桑社)が発売予定。
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一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書

13キロのダイエットに成功した作者が語る

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