ヒラリーに過激派の過去? ホワイトハウスが非公開要請した卒論の謎

羽田夏子

ヒラリーを苦しめる卒論の亡霊

 アリンスキーの方法論を「効果がない」と結論づけたヒラリーですが、皮肉なことに、政治家となったヒラリーに苦戦を強いたライバルたちは、アリンスキーの思想を体現する民衆扇動者たちでした。  アリンスキー思想の継承者として最も有名なのが、バラク・オバマ現大統領。2008年の大統領選挙で、それまで夫ビルの選挙も含めて敗北を知らなかったヒラリーに、初めての黒星をつけた相手です。  オバマは1985年からの4年間、アリンスキーの影響下で始まったシカゴの地域振興事業(DCP)の住民組織者として働いています。無名の一議員だったオバマが、民衆の草の根運動を追い風に、大統領の座にまで上り詰めたのは、周知の事実です。  また2016年の大統領予備選で、最後までヒラリーとしのぎを削ったバーニー・サンダース議員も、アリンスキー思想の体現者といってよいでしょう。アリンスキーと同じユダヤ人であり、シカゴ大学の後輩でもあるサンダースは、1960年代にアリンスキーの設立した人種平等連合(CORE)で働いています。若年層を中心に爆発的な支持を得たサンダースも、アリンスキーの組織論をうまく活用していました。  民主党の中枢的存在であるヒラリー、オバマ、サンダースの3人の政治家が、半世紀も前に没した「ソウル・アリンスキー」という人物にそれぞれ深くつながっているのは、不思議なものです。生涯を通じて「変革は外からもたらされる」との主張を続けたアリンスキーは、今や米国をその中心部から変えているのかもしれません。 <取材・文/羽田夏子 写真/Alan C.> ●はだ・なつこ/1984年東京生まれ。高校から米国に留学。ヒラリー・クリントンの母校であるウェルズリー大学を卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科にて国際関係学修士を取得。国連機関インターン、出版社勤務を経て、翻訳編集プロダクションを立ち上げる。日本メンサ会員。
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