ベネッセ、わずか3か月で社長交代……生き残りのカギは「IT化」と「グローバル化」だ

ベネッセは「リクルート化」すべき!?

 参考にすべきは、やはりリクルートだろう。同社も国内向けの様々な情報誌で稼いでいるが、人口減少社会を前提に、まだ国内の媒体がまだ稼げているうちに、海外買収をしまくるという戦略をとっている。国内最大の広告代理店である電通も同様で、総利益ベースでの海外比率がすでに50%を超えるほど熱心に海外企業を買っている。  リクルートや電通とは売上や保有現金が3倍ほど小さいとはいえ、ベネッセに見習える点はあるはずだ。  しかし、ベネッセは900億円もの現金をうまく使えていない。「ベルリッツ」「東京個別学院」「鉄緑会」など既存の教育機関の買収は積極的に進めてきたが、海外・ ITという領域では存在感がない。  ベネッセの自己資本比率は30%台で結構銀行からの借入も多く、60%台のリクルートと比べると台所事情は苦しい。お金を使うのには慎重にならざるをえないのだろうが、900億円もの現金を持っていることは確かなので、覚悟を決めてITベンチャーと海外企業を買収したほうが良い。例えば、すでに上場した企業だが、オンライン英会話で国内No.1との触れ込みの「レアジョブ」の時価総額は40億円足らずだ。

オンライン英会話サイト「レアジョブ」。創業は’07年ながら成長著しい

 おそらくベネッセ内部には今後、会社を支えるのに必要となる人材があまりいないのではないだろうか。教育業界の発展や変革に情熱を燃やす人はいるだろうが、スタートアップ業界に詳しかったり、海外でビジネスができる人が全然足りていないように見える。(もっともそれは多くの日系大企業に言えることだが)。事業買収は人材獲得の意味合いも持つ。自前でできないなら、できる人を買収して呼び込めば良い。  さて、新社長の安達保氏はそういった戦略を取れるのだろうか。安達氏はマッキンゼーを出た後、カーライルという再生ファンドでの経験が長い。同社で安達氏が主に手がけてきたのは飲食店や食品会社だ。これらはIT化から距離のある業界だ。ベンチャーについてはあまり詳しそうではない。投資先の海外展開を積極的に進めたという実績もなさそうだ。どういう戦略が打ち出せるか、不透明だ。  新社長は、前のクックパッドの社長だった穐田氏のような人物が理想的だったのではなかろうか。安達氏と同じマッキンゼー出身だが、カカクコムやクックパッドといった日本最大級のITサービスの会社で社長として事業を急拡大させた経験があり、ベンチャーの買収も手慣れている。  クックパッドでは海外企業の買収とその後の事業成長という海外展開も経験した。穐田氏は1月から創業者の佐野氏に「お家騒動」を起こされ、追い出される形で最近クックパッドを去ったばかりだった。タイミング的にはベネッセへの転身もありえたように思える。  いずれにしても、ベネッセが思い切った策によって伝統的な日系大企業から脱皮できるのかどうか注目である。 【決算書で読み解く、ビジネスニュースの深層】 <文/大熊将八> おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok
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