なぜ米Uberは中国市場から事実上の撤退を余儀なくされたのか?

滴滴出行の勝因

 では、Uber Chinaのライバルであった滴滴出行は、なぜ勝者になりえたのであろうか?  滴滴出行の勝因は、登録運転手の多さにあると言われる。車があれば原則誰でも登録でき、「白タク」を含め1500万人以上の運転手が滴滴に登録し、タクシーが捕まりにくい大都市や公共交通機関が乏しい地方などでの利用拡大につながっているとしている。  ウーバーは上海など主要都市でしかサービス展開できていないとされる。高級路線を狙い、運転手側に「5年以内の新車に限る」「10万元(約150万円)以上の中高級車を使わなければならない」などの制約を課してきたため、運転手が集まらず、使い勝手も改善しない悪循環が続いていたという。(参照:日経新聞)  また、2016年7月に中国政府は、相乗りの配車業を合法としたことも滴滴出行の勝利を後押しした。というのも、配車事業の新規則では、シェア争いのために激化していた「補助金」競争を抑止するために、採算割れとなる営業活動が禁止されていたからだ。そのため、シェアの小さいUber Chinaの受けた打撃の方が大きく、滴滴出行の勝利が決定づけられたのだ。  ただ、Uberの中国撤退は、完全な敗北というわけではない。滴滴出行の20%の株式を保有し、今後の中国事業拡大の恩恵を受けられるのは変わらないからだ。また、中国での大赤字が無くなり、UberのIPOの実現性が高まったとも言える。同社の今後の展開を注視していきたい。 <文/丹羽唯一朗>
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会