大連のランドマーク的存在はなぜ市民不在のまま密かに撤去されたのか?

我妻伊都

.香港返還の年に合わせ19.97mだった漢白玉華表

 8月5日を迎えたばかりの深夜0時半ごろ、中国は大連のランドマークでもあった1本の塔が切り倒された。中国大連の夏の恒例イベント「国際ビール祭り」が4日閉会したその日の夜だった。ビール祭りで並んでいたテントなどを撤去するためにアジア最大規模を誇る楕円形の星海広場にはぐるっと規制線が敷かれ広場内へ入場できなくなっていた。

「やはりこの国は市民の意向が無視される」

 大連出身の飲食店経営者の男性はやり切れない口調でつぶやいた。

 ひっそりと姿を消した塔は、「漢白玉華表」という龍が装飾された白色塔だ。元々華表とは、皇帝を守護するために対で建立された守護塔で、北京の天安門前にも明(1368年~1644年)の時代に建てられた塔がその姿を留めている。

 大連の華表は、大連市の市政100年と香港返還に合わせて1997年6月に完成した中国らしく数字にこだわり高さ19.97m、直径1.997mで、広場中央に建てられた。広場は上空から見ると星柄に見えるようにデザインされており、星海という地名は、戦前日本時代に南満州鉄道株式会社が心血を注いだリゾート地「星ヶ浦」に由来している。

 香港返還という中国長年の祈願に合わせたとはいえ、特別な意味を持つ華表を1地方都市である大連に中華人民共和国建国後、初めて建てた。これは大きな意味があったのではないだろうか(ちなみに北京の華表は9.57m)。華表は大連の一般庶民にとっては政治的な意味は持たなかったが北京より大きいということに誇りを感じ、大連を代表する建築物だった。

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中央政界で失脚した元市長に由来

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