こうした問題について、M5S出身のビルジニア・ラッジ市長は選挙中の公約でこれらの諸問題を解決するのは容易であるかのような解決理論を流暢に語り続けたという。しかし、彼女が実際に政権に就くと、事態は容易ではないというのが分かったようだ。それで陣頭指揮を取って解決に取り組んでいるのかというと、そうではなく、右往左往しているだけ。涙を流しながら、解決に向け取り組んでいると語った場面もあったという。
更に悪いことに、彼女は、財政支出節約アピールで、イタリアオリンピック委員会が招待したリオ五輪への招待航空券を公の場で破るという行動に出たのだが、これが裏目に出てしまった。ラッジ市長的には、財政赤字に苦しむローマでの開催に反対しているのだが、在ローマ企業にとっては大きなビジネスチャンスなわけだ。これにより、市民からだけでなく、ローマの企業家をも敵に回してしまったという。
ポピュリズム政党候補者の直面した現実。果たして若きローマ市長は今後どのような方向に舵を切っていくのだろうか。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。