2015年6月のファルコン9打ち上げ失敗の様子 Photo by Spacecom
今回の事故原因はまだわかっていないが、その調査と対策には数か月がかかるとみられる。また、破壊された発射台の修理にも数か月がかかるとみられる。
もし原因が発射台側にあった場合でも、ファルコン9は現時点で、今回被害を受けた発射台か、もしくは西海岸のカリフォルニア州にある発射台からしか打ち上げることができず、またカリフォルニアから打ち上げる場合は飛行方向が限られており、損傷した発射台の代わりにはならないため、いずれにしても打ち上げ計画に大きな影響が出ることは避けられない。
スペースXでは今年9月から12月にかけて、10機近いファルコン9の打ち上げを予定していたが、軒並み遅れることになろう。この打ち上げの中には、アモス6のような通信衛星から、国際宇宙ステーションへ向けた補給物資まで、さまざまなミッションが含まれており、ファルコン9の打ち上げが滞ることによる影響は大きい。なお国際宇宙ステーションへの影響については、NASAは「現在影響を調査している」とコメントしている。
また今年10月ごろには、一度打ち上げて回収したファルコン9を再び打ち上げる「再使用打ち上げ」を行うと表明されていたが、こちらも延期することは必至である。さらに今年末ごろには、ファルコン9を3基束ねて打ち上げ能力を増した超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」の打ち上げも予定されていたが、こちらも延期となるとみられる。
さらに長期的には、今回の事故でファルコン9への信頼度が下がり、衛星打ち上げの受注が減ったり、またファルコン9で打ち上げる衛星にかかる保険料が値上げされるといった影響が出る可能性もある。また2017年に予定しているスペースXの有人宇宙船「ドラゴン2」の打ち上げや、2018年以降に実施予定の火星探査などにも少なからず影響が出るだろう。
スペースXにとっては、ファルコン9の失敗は2015年6月以来となる。この事故では打ち上げから約2分後に空中分解を起こし、搭載していた補給船「ドラゴン」を失っている。このときは打ち上げ再開までには約半年を要した。
今回の事故によって、スペースXは大きな試練を迎えることになった。しかし、ロケットの失敗は、程度の違いはあれど珍しいことではなく、前述のように同社にとっても初めてではない。また、すでに30機近くものロケットを飛ばしている実績もあるため、この困難を乗り越えることは可能だろう。
NASAは今回の事故を受けて、次のようにコメントし、スペースXを鼓舞している。
「今日のスペースXの事故は、宇宙飛行という事業が極めて大変な挑戦であるということを、改めて思い出させてくれます。しかし、我々のパートナーであるスペースXは、成功と失敗の中で、学び続けていくことでしょう」。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。
Webサイト:
http://kosmograd.info/about/
【参考】
・
Anomaly Updates | SpaceX
・
SpaceX rocket and Israeli satellite destroyed in launch pad explosion – Spaceflight Now
・
Falcon 9 Rocket & Israeli Satellite destroyed in On-Pad Explosion – Spaceflight101
・
45th Space Wing at Patrick Air Force Base, Fla.
・
Mark Zuckerberg – As I’m here in Africa, I’m deeply disappointed…