公開されている鳥貴族の製造原価を見ると、その内訳である原材料費・労務費・経費のうち、原材料費だけが明らかに伸びていて、労務費は3%ほどしか変動がないのだ。
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店舗を拡大し従業員を増やしているのに労務費が変わらないということは、従業員1人あたりのコスト削減が進み、負担は増しているということである。「メニューの簡素化」だけで負担はしのげるのだろうか。逆に、しのげるようにとメニューをより簡素なものに変えるのであれば、エンドユーザーへの提供価値を下げることになる。
鳥貴族はやはりある程度、従業員に無理をさせており、アルコール混入などの事件は起きるべくして起きた、とは言えないだろうか。
鳥貴族にはもう1つ懸念がある。ずっとプラスが続いてきた既存店の前年比売上高が、今年の4、5月にマイナスに転じたことだ。
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6、7月はまたプラスに戻したが、そろそろ天井が見えてきていると言える。店舗の面積が変わらなければ客数を増やすには限度があるから客単価を上げていく必要があるが、そうすると「激安」ブランディングと真っ向からぶつかることとなる。
塚田農場も鳥貴族も、現在のブランディングと、それを実現するために構築したユニークなビジネスモデルの見直しを迫られている。しかも両社とも積極的な銀行借入によって負債も膨らんでいるため、着実にキャッシュを稼ぎながら会社の舵取りを変えるという荒技を強いられる。
拙著『
進め‼ 東大ブラック企業探偵団』では「外食ほど長期的な生き残りが難しい業界はなく、どこも寿命は5年だ」というメッセージを発した。デフレ時代の徒花となった「ブラック居酒屋」と同じ道を2社が辿らないことを祈りたい。
【決算書で読み解く、ビジネスニュースの深層】
<文/大熊将八>
おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『
進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは
@showyeahok